実験室で作れるブラックホール
ブラックホールについては、その振る舞いに関するさまざまな理論が提唱されてきましたが、これを実際に観測で確認するとなると大きな困難が立ちはだかります。
特に、逆反応と呼ばれる現象は微妙すぎて観測では検出できません。
逆反応というのは、ホーキング輻射などのブラックホールの蒸発現象のことです。
ブラックホールは何でも飲み込んでいるように見えますが、実際には放射も行っています。もしブラックホールがまったく成長することがなければ、この効果によっていずれは完全に蒸発してしまいます。
研究者たちはこうした、ブラックホールの逆反応による周辺空間への影響を実験室で調べたいと考えていました。
しかし、当然のことながら、ブラックホールを実験室に作り出すというのは現状では不可能です。
そこで研究者が考えたのが、類似物を使って調べるということでした。
誰でも一度は、排水口に流れ込む水の渦と、ブラックホールを関連付けて想像したことがあると思いますが、研究者も同じことを考えました。
実際、排水溝を渦巻く水は、ブラックホールに物質が降着する際の挙動とよく似ています。
研究チームは、ここ10年間ほど、この排水渦とブラックホールの類似性について研究を行ってきました。
そして今回、ついにブラックホールの逆反応の影響を、水タンクを使った実験装置によって確認することに成功したのです。