「ホルモン物質」による生物発光は初!
今回発光が確認されたのは、
ヨロイザメ(学名:Dalatias licha)
ブラックベリー・ランタンシャーク(学名:Etmopterus lucifer)
サウザン・ランタンシャーク(学名:Etmopterus granulosus)
の3種です。
ヨロイザメは全長180センチまで成長し、発光する脊椎動物としては世界最大となります。
あとの2種はヨロイザメより小さく、全長47〜60センチほどです。
それでも既知の発光生物は、菌類や昆虫、クラゲ、一部の小型魚類など小さなものばかりで、それより大きなサメで確認されたのは珍しいと言えます。
一方で、サメの生物発光は報告例に乏しく、あまり研究も進んでいませんでした。
そこで、ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)と国立水・大気圏研究所(ニュージーランド)は、昨年1月からニュージーランド東海岸沖で調査を開始。
対象となったのは、水深200〜1,000メートルの中深層で、別名「トワイライトゾーン」と呼ばれる水域です。
トワイライトゾーンには、発光生物がたくさん分布し、一説では、90%以上が何らかの生物発光を持っているとされます。
トロール網漁の末、ヨロイザメ13匹、ブラックベリー・ランタンシャーク7匹、サウザン・ランタンシャーク4匹の採捕に成功。
3種を調べた結果、皮膚上に無数の発光体が発見されました。
さらに3種の発光は、「メラトニン」というホルモン物質によって誘引されており、これは発光生物として初のことです。
また、サメが光る理由として、研究チームは「一種のカモフラージュ」と推測します。
3種が放つ柔らかな青い光は下腹と横腹に集中しており、海面の青い光と重なると、その下を泳ぐ捕食者からは見えづらくなります。
これは「カウンター・イルミネーション(逆光照明)」というカモフラージュ法です。
同チームは論文内で「生物発光は海中ではまれな現象とされます。
しかし、深海の広大さと、中深層における発光生物の出現率を踏まえれば、地球最大の生態系を構築する上で重要な役割を果たしていることは明らかでしょう」と述べています。