プラセボ効果は複数の脳領域で不均一に生じていた
研究の結果、プラセボ効果による鎮痛が痛み発生の初期プロセスに関与する脳領域「島皮質後部」の活動を軽減させると判明。
これは大脳皮質の中で唯一、痛み感覚を刺激して呼び覚ますことのできる部位です。
プラセボ鎮痛は痛みを紛らわしているのではなく、そもそも痛みの発生を抑えていたのです。
また以前の研究では、プラセボ鎮痛により痛みを予期して前頭前皮質が活性化すると判明していました。
これにより痛み信号の伝達経路がブロックされたり変更されたりしていたのです。
ただし今回の総合的な研究によると、前頭全皮質の活性化は不均一であると分かりました。つまり対象となった20の研究には、活性化したものもあれば、強く活性化しなかったものもあったのです。
これらの違いは方法や思考の違いから生じると考えられます。
実際、映像や読み聞かせによるプラセボ効果を用いた治療では活性化が認められましたが、アクセプタンス(ありのままを受け入れようとする心理学的な考え方)では活性化されませんでした。
つまりプラセボ鎮痛は、プラセボ効果を与える方法や個人の考え方によって大きく異なるという一面があるのです。
ではプラセボ鎮痛についてまとめると、どのようなことが言えるでしょうか?
プラセボ鎮痛は、脳の一部の領域に影響を与えるものではなく、痛みに関連する複数の脳領域に影響を与えるといえます。
そしてその効果はすべて同じように発生するのではなく、プラセボに対する認識やその他個々の要因に応じて、異なった仕組みで生じます。
この結果はプラセボ治療に対する個人の反応を予測することに役立ちます。状況、患者、病気に応じてプラセボ治療をおこなうなら、患者をより効果的に助けることができるでしょう。