「鼻の進化」が水分保持につながった可能性
ポンツァー氏によると、人体の水サイクル量が減った理由はまだ分かっていません。
本来、熱帯雨林に暮らす霊長類は必要な水分を主に植物から摂取します。そのため、直接水を飲まずとも何日間か過ごせますが、同時に森林から離れることはできません。
しかし、人類は森を脱出して、乾燥した地に進出し、今日まで文明を発達させてきました。
今回得られたデータの中で特に興味深かったのは、人の母乳における水分/カロリー比率が、他の霊長類の母乳のそれより25%低いという事実です。
「これは人類の喉の渇きに対する体の反応がなんらかの理由で再調整されたため、他の類人猿に比べ、カロリーあたりの水分摂取量が少なくなったことを意味する」と同氏は指摘します。
また別の観点として、人の鼻が他の類人猿に比べ、外側に突き出ていることがあげられます。
類人猿は鼻が平らで鼻孔がそのまま露出していますが、人類では突出した鼻により穴がカバーされることで、呼吸時の水分喪失が大幅に減ったのです。
鼻の突出は約160万年前のホモ・エレクトスに始まっており、その頃から人類の水分サイクル量が変わってきたと予想されます。
いずれにせよ、この水消費量の変化が、人類を乾燥した土地に適応させた一因であるのに間違いありません。
研究チームは今後、この重大な進化が人類において、いつ、どのように起こったかを解明していく予定です。