一般人の脳活動パターンが記憶アスリート化していた
上の図の左は、記憶アスリートと訓練を受けていない一般人の実力差を示しています。
記憶アスリートは20分の制限時間で平均72の単語を記憶できたのに対して一般人は40個に留まっていました。
しかし「記憶の宮殿」のトレーニングを受けた一般人は、20分後に記憶していた単語を40個から62個に大幅増加させることに成功します。
さらに24時間後に再び確かめたところ、トレーニングを受けた一般人は56個を覚えていた一方で、訓練を受けていない一般人は21個しか覚えていませんでした。
この結果は「記憶の宮殿」を用いた記憶術は一般の人間に対して、短期・長期の両方で有効に働いたことを示します。
しかし、より興味深い現象は脳の活性状況の測定によって明らかになりました。
研究者はテストを行うと同時に、記憶アスリートとトレーニングを受けた一般人の脳の活性パターンをMRIで調べました。
すると意外なことに、記憶中の記憶アスリートの脳とトレーニングを受けた一般人の脳は、記憶処理と長期記憶に関与する区域での活動が大きく低下していたのです。
この結果は、記憶にかかわる脳の区域の活動が「低い」ほど、記憶力が向上することを示します。
研究者はこの意外な発見について「記憶の宮殿」を使った方法が、通常の記憶処理より脳を効率的に働かせられるためだと結論しました。
ですが発見は記憶中の脳活動に留まりませんでした。
記憶を終えて休憩中の脳の活性を測定した結果、「記憶の宮殿」のトレーニングを受けた一般人において、記憶の最中には働いていなかった長期記憶を担当する領域の働きが活性化し、他の脳機能との接続性を増していることがわかりました。
この結果は「記憶の宮殿」を使った記憶は休憩中にもかかわらず、脳内で自動的に記憶の長期化が進んでいることを示します。