三葉虫の呼吸器官
三葉虫は約4億5000万年前に地球上に現れた海の生き物で、恐竜よりも長い2億5000万年以上の期間を生き続けました。
これは海洋生物のグループにおいて、進化の面で大成功を収めた生物と言えます。
しかし、そんな三葉虫もオルドビス紀末に訪れた大量絶滅期に、絶滅してしまいました。
そのため、現代で確認できるのは彼らの化石だけです。
通常化石には軟組織は残らないため、三葉虫の体の器官がどうなっていたのか詳しいことはわかりません。
これまでは、現代にも生きている甲殻類の節足動物と非常に類似点が多いことから、それらを参考に彼らの生態や機能を推測していました。
こうした中で、謎となっていたのが、三葉虫はどうやって呼吸していのかという点です。
三葉虫は非常に長い期間生存していたため、非常に多くの種が存在していました。化石で発見されているだけでも2万2000種以上もあります。
そのうち、軟組織が見られたのは約20種程度です。
これらは愚か者の金と呼ばれる黄鉄鉱に保存されていました。
黄鉄鉱の化石では、CTスキャナーによって周囲の岩石との密度の違いを読み取ることができ、それを元にしてめったに見られないエラ構造の3次元モデルを制作することができたのです。
「愚か者の金と呼ばれていますが、これらの古代の構造を理解する鍵となる黄鉄鉱は、金より貴重です」と、カリフォルニア大学リバーサイド校の地質学教授ナイジェル・ヒューズ氏は述べています。
こうした貴重な黄鉄鉱に保存された三葉虫の化石と、最新のスキャン技術によって、顕微鏡でさえ見ることの難しい三葉虫の小さな解剖学的構造が明らかになりました。
その結果、三葉虫には上肢の太ももにあたる部分に、エラに似た構造がぶら下がっていたということがわかったのです。