変な場所にある三葉虫のエラ
CTスキャンによる調査は、顕微鏡でも見ることが難しい、幅10~30マイクロメートルという三葉虫の小さな構造を明らかにすることに成功しました。
ちなみに髪の毛の太さは100マイクロメートルです。
三葉虫は、現代の甲殻類と同じ様に上肢と下肢に脚がわかれていますが、上肢の部分にエラを持っていました。
こうして研究者たちは、三葉虫がどのようにして血中に酸素を取り込んでいるかを知ることができました。
このエラは、現代のカニやアカザエビとほとんど同じ様に見えるといいます。
ただ、三葉虫の下肢で獲物を捕まえ、上肢は泳いだり、地面を掘ったりするために使われていたと考えられています。
三葉虫は海底を這うように歩いていたと考えられ、そのために上肢は使われていました。
そのため、上肢が呼吸器の最適な場所とは考えられません。研究者によると、この部位にエラがあったら、すぐに堆積物で詰まってしまうだろうといいます。
なぜ、彼らがそのような場所に呼吸器の構造を進化させたのかは未解決の問題です。
ただ、古代の生物の呼吸器に関する知識が得られたという発見は、古代の地球大気の変化を理解するために、非常に重要な手がかりになります。
地球上の生命は約5億4000万年前爆発的な多様性と複雑さを獲得しました。
これらの動物には酸素が必要だったため、理論的には彼らの呼吸器の変化は、地球の酸素量の上昇と関連づいているに違いありません。
現代の私たちには、太古の地球の大気を測定する手段はほとんどありません。
今回の研究成果は、そんな太古の地球の大気環境の調査を大きく躍進させる助けになるだろうと、研究者は語っています。