温度によって吸水・排水を切り替える特殊ゲルを採用
新しい浄水フィルターは、温度によって変化する特殊なゲル材料で作られています。
常温ではスポンジのように水を吸い込みますが、33℃にまで加熱されると逆に水を排出する特性があります。
ゲルは多孔質なハニカム(ハチの巣)構造をしており、それらは分子鎖でメッシュ状になっています。
しかもその中には水に混ざりやすい親水性領域と、水と混ざりにくい疎水性領域が存在。
常温では分子鎖は長くて柔軟性があるため、親水性の領域に水が流れ込みます。
しかし太陽光が材料を温めると、疎水性の分子鎖が凝集し、逆に水を押し出すのです。
これだけでは普通のスポンジのように思えますが、ゲルは内層と外層の2つの層に包まれており、これらが汚染物質の侵入を防いでくれます。
中層は、ポリドーパミンと呼ばれる材料で、太陽光を熱に変え、重金属や有機分子を遮断する役割があります。
そして外層はアルギン酸のフィルターです。これによって病原菌が内部のゲルに侵入するのを防ぎます。
もちろん、フィルターを通しさえすれば、水は浄化されます。しかし水をフィルター移動させるための力が必要であり、従来のろ過機では電気駆動のポンプが採用されていました。
新しいゲルフィルターはゲルの吸水力と排出力を利用しているので、太陽光以外のエネルギーを必要としません。
加えてゲル材料は低コストなため、非常に高い費用対効果を発揮します。
どんな場所でも簡単に飲料水を生み出すフィルターは、さまざまなケースで活用できるでしょう。
現在、研究チームは、この新しい技術を広く利用するための方法を模索しています。