別の惑星で初めて飛んだヘリコプター
4月19日、米国東部標準時午前3時46分(日本時間4月19日17時46分)に、NASAは火星において人類初となるヘリコプターの飛行を成功させました。
初飛行を成功させたのは、パーサヴィアランスに搭載されていたヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ:創意工夫の意)」です。
この地球外の初フライトでは、「Ingenuity」は高度3メートルまで上昇し、30秒間のホバリングを維持した後、安全に着地して動力を停止させました。
合計の飛行時間は39.1秒です。
3メートルという高度は、NASAがIngenuityに規定していた最大高度です。
約30秒の飛行時間というのも、短いように感じますが、1903年に人類初の飛行を成功させたライト兄弟のフライト時間が、約12秒だったこと考えると十分なものでしょう。
「ライト兄弟が私たちの惑星で初飛行を行うことに成功してから117年後、NASAのIngenuityヘリコプターは、この驚くべき偉業を別の惑星で成功させたんです」
NASAの科学ミッション部門のトーマス・ザーブチェン副長官はそのように述べ、この初飛行に成功した火星の地を「ライトブラザーズフィールド(Wright Brothers Field)」と名付けることを発表しています。
このフライトが非常に難しかった理由は、火星の大気圧が地球の1%しかないということと、重力は地球の3分の1しかないという点にあります。
大気圧は大気密度を表しています。火星は地球に比べて空気分子が1%程度しかないのです。
通常航空機は、翼と空気分子の相互作用によって揚力を生み出します。空気が薄ければ、航空機は空を飛ぶことが困難になるのです。
また、薄い大気の環境は地球上でシミュレーションして実験することができますが、弱い重力環境は再現できません。
さらに、火星と地球の距離は7528万キロメートルも離れていて、通信を1往復させるのに最速で約6.5分の時間がかかります。
そのため、遠隔操作でヘリコプターを制御したりサポートするということも困難なのです。
では、「Ingenuity」はどうやってそんな条件の中で飛行を成功させたのでしょうか。