地球以外で初めて、人類はヘリコプターの飛行に成功した。
地球以外で初めて、人類はヘリコプターの飛行に成功した。 / Credit:NASA/JPL-Caltech
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人類初「火星の空をヘリコプターで飛ぶ」ことに成功! 歴史的瞬間をとらえた映像も公開中

2021.04.20 Tuesday

4月19日、NASAは地球以外の惑星で初めてとなる、航空機の飛行に成功したことを発表しました。

火星探査機パーサヴィアランスに搭載されていたヘリコプターは、薄い火星の大気の中を高度3メートルまで上昇し、30秒間安定したホバリングを維持しました。

しょぼい、と思ってしまった人はきっと地球をベースにこの成果を捉えているからでしょう。

火星は地球の1%しか大気が存在せず、そのため地球上と同じ設計では航空機は十分な揚力を生み出すことができません。

これは、ライト兄弟の偉業と並ぶ歴史的な出来事なのです。

NASA’s Ingenuity Mars Helicopter Succeeds in Historic First Flight(NASA) https://www.nasa.gov/press-release/nasa-s-ingenuity-mars-helicopter-succeeds-in-historic-first-flight

別の惑星で初めて飛んだヘリコプター

4月19日、米国東部標準時午前3時46分(日本時間4月19日17時46分)に、NASA火星において人類初となるヘリコプターの飛行を成功させました。

初飛行を成功させたのは、パーサヴィアランスに搭載されていたヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ:創意工夫の意)」です。

この地球外の初フライトでは、「Ingenuity」は高度3メートルまで上昇し、30秒間のホバリングを維持した後、安全に着地して動力を停止させました

合計の飛行時間は39.1秒です。

3メートルという高度は、NASAがIngenuityに規定していた最大高度です。

約30秒の飛行時間というのも、短いように感じますが、1903年に人類初の飛行を成功させたライト兄弟のフライト時間が、約12秒だったこと考えると十分なものでしょう。

「ライト兄弟が私たちの惑星で初飛行を行うことに成功してから117年後、NASAのIngenuityヘリコプターは、この驚くべき偉業を別の惑星で成功させたんです」

NASAの科学ミッション部門のトーマス・ザーブチェン副長官はそのように述べ、この初飛行に成功した火星の地を「ライトブラザーズフィールド(Wright Brothers Field)」と名付けることを発表しています

Ingenuityが最初の飛行中に撮影した映像。
Ingenuityが最初の飛行中に撮影した映像。 / Credits: NASA/JPL-Caltech

このフライトが非常に難しかった理由は、火星の大気圧が地球の1%しかないということと、重力は地球の3分の1しかないという点にあります。

大気圧は大気密度を表しています。火星は地球に比べて空気分子が1%程度しかないのです。

通常航空機は、翼と空気分子の相互作用によって揚力を生み出します。空気が薄ければ、航空機は空を飛ぶことが困難になるのです。

また、薄い大気の環境は地球上でシミュレーションして実験することができますが、弱い重力環境は再現できません。

さらに、火星と地球の距離は7528万キロメートルも離れていて、通信を1往復させるのに最速で約6.5分の時間がかかります

そのため、遠隔操作でヘリコプターを制御したりサポートするということも困難なのです。

では、「Ingenuity」はどうやってそんな条件の中で飛行を成功させたのでしょうか。

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