なぜ人は自分の顔に反応できるのか?
人は自分の顔に対して自動的に注意を向けることができ、他人の顔よりも素早く正確に反応することが知られています。
こうした現象は、自己顔の優位効果と呼ばれています。
大勢の写った写真の中から、自分の顔を素早く見つけ出せるのはこうした現象のわかりやすい一例です。
また興味深いことに、この自己顔の優位効果は、意識に上らないようなサブリミナルで自分の顔が表示された場合にも観察されます。
サブリミナルとは、情報量の多い動画などの合間に、認識できないような短時間だけ画像を表示することをいいます。
このとき、意識することはできずとも、潜在意識に情報が入ることで、何らかの効果が起きる場合があります。
自分の顔というものは、こうした潜在意識レベルでも脳がなんらかの処理を行っている可能性があるのです。
しかし、なぜ人が素早く自分の顔に反応できるのか? という自己顔の優位効果が生まれる脳の仕組みついてはわかっていませんでした。
そこで、今回の研究チームは、自分の顔と他者の顔をサブリミナル表示させとき、脳がどのように活動しているかfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使って調査しました。
すると、被験者は自分の顔が表示されたことに気づいていないにも関わらず、自分の顔に対して、脳深部にある腹側被蓋野という領域が活性化したのです。
この領域は、ドーパミンを放出して、やる気を引き出す報酬系の中枢とされています。
対して、他人の顔が表示された場合、なじみのない情報に応答する、脳の扁桃体が活性化していました。
つまり、ドーパミン報酬系が働くことで、人は自分の顔に対して自動的に注意が向き、反応が促進されて、自己顔の優位効果が生じていると考えられるのです。