目を大きくする美容フィルターは、自己認識を妨げるのか?
今回の研究では、もう一つ興味深い調査が行われています。
それが最近良く見かける、美容フィルターを使った場合の、脳の認識の変化です。
美容フィルターは、目を大きくする、あごを細くするなどの写真加工を行うアプリケーションです。
確かに極端に加工された顔というものは、美しいと言うよりはむしろ不気味です。
それでも私たちは、それが自分の顔であると認識できるのでしょうか?
そこで、研究チームは写真を加工して目やあごなどのパーツを大きく変えた場合の、脳の活動も調査しました。
興味深いことに、この場合でもサブリミナルの表示では、自分の顔に対して、脳の腹側被蓋野の活動は高いままでした。
つまり、潜在意識レベルでは、私たちは顔のバランスではなく、目や鼻などの顔パーツの形に基づいて、自分と他者の顔を見分けている可能性が高いのです。
また、こうした脳の反応は、親しみやすい顔に対して起きてるのではないかという疑問もありました。
そのため、研究チームは、家族や友人の顔と自己顔のサブリミナル表示を試してみましたが、この場合も一貫して自分の顔だけに対して、ドーパミン報酬系の活性が確認されました。
どうやら私たちには、自分の顔に対してだけ、何か意欲を刺激する効果があるようなのです。
今回の研究は、美容フィルターなどの調査も行ったため、女性だけの被験者で実施されています。
そのため、男性でも同じような自己顔に対するドーパミン報酬系の活性があるかどうかは、現在のところ不明です。
ただ、研究の結果からは、私たちが自分の顔が表示されたとき、やる気や意欲が向上していることが示されています。
これは、意識に上らないようなサブリミナルで効果があるため、これを利用することで、意識を邪魔せずにやる気を高める方法などが開発できるかもしれません。
こうした報告を聞くと、ナルシストという人たちが存在するのも、なんとなく理解できる気がします。
しかし、動物や赤ちゃんは、鏡を見ても自分を認識しないので、こうした脳の反応はもともと備わっているものではないようにも思えます。
自己の認識とドーパミン報酬系はどこから結びつくのか、いろいろと興味が尽きません。