反物質でできた星がどのように見えるかは不明だが、対消滅によって強いガンマ線源となる可能性が高い
反物質でできた星がどのように見えるかは不明だが、対消滅によって強いガンマ線源となる可能性が高い / Credit:depositphotos
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「反物質星」の候補となる天体が14個見つかる

2021.05.03 Monday

SF作品の中でしか、ほとんど名前を聞くことがない反物質ですが、広い宇宙のどこかにはコアで反物質を燃やす星(Antistar)があるかもしれません。

荒唐無稽に思えますが、科学者はまだそんな反物質星の存在を完全に排除することができていないのです。

4月20日に科学雑誌『Physical ReviewD』で発表された新しい研究は、NASAのフェルミガンマ線望遠鏡を使い、反物質星の候補となる天体を天の川銀河の中から14個特定したと報告しています。

これは反物質星を見つけたという主張ではありません。

天の川銀河にある約1000億個の星の中で、可能性があるのは14個以下だろうという報告です。

しかし、天の川銀河の中だけでも14個も候補があるというのは、むしろ驚きでしょう。

Stars made of antimatter could exist in the Milky Way(livescience) https://www.livescience.com/potential-antistars-in-milky-way.html
Constraints on the antistar fraction in the Solar System neighborhood from the 10-year Fermi Large Area Telescope gamma-ray source catalog https://journals.aps.org/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.103.083016

反物質でできた星 アンチスターとは?

反物質は、この世界を構成する通常の物質とは反転した性質を持つ反粒子で構成されている物質のことです。

理論的には、粒子と反粒子は、質量は同じで電荷が反対だとされています。

たとえば、正電荷の陽子に対して負電荷をもった反陽子、負電荷の電子に対して正電荷を持った反電子のようなものです。

こうした反粒子は、通常の物質と同じように結合して反物質を形成します

たとえば水素の構造がすべて反電子や反陽子、反中性子で作られた反水素などです。

反陽子と反電子で構成される反水素
反陽子と反電子で構成される反水素 / Credit:Wikipedia

しかし、粒子と反粒子は出会うと対消滅という爆発を起こして両方がこの世界から消えてしまいます

天文学者たちは、宇宙が誕生したビッグバンでは、粒子と反粒子はほぼ同数誕生したと考えています。

しかし、そこに何らかの偏りが生じたため、最終的には通常の粒子のみが残り、現在の物質で構成された世界が誕生しました。

この物質と反物質の非対称性は、物理学における大きな謎の1つです。

非対称性の問題はいったん脇に置いておくとして、この反物質は、宇宙誕生時に限らず自然の中で常に発生しつづけています。

最近の研究では、雷の中でも反電子の発生が確認されていて、それは対消滅を起こしてガンマ線を放出しています。

NASAのフェルミガンマ線望遠鏡を地上に向けると、そこには雷雨で発生した反電子が対消滅を起こすガンマ線のフラッシュを見ることができます

2010年にフェルミガンマ線望遠鏡で発見された雷雨によるガンマ線のフラッシュ(赤で表示)/Credit:NASA/Goddard Space Flight Center

このため反物質は物質のポケット(空洞)のような場所に残って、通常の物質同様に、星のような天体を形成する可能性も考えられるのです。

これは反物質星(アンチスター:Antistar)と呼ばれていて、半水素を核融合させて燃える以外は、通常の星と変わりません。

もちろん反物質星の存在は標準的な考え方ではありません。ただ、この可能性を完全に排除することはまだできないのです。

物理学や天文学は、実際に見て確認することが何より重要な学問です。

そのため反物質星なんて絶対存在しないと言い切ることはかなり困難です。

しかし、逆に存在すると証明するなら、1つでいいから反物質星を見つけ出せば解決します。

そこで、一部の科学者は反物質星の可能性がありそうな候補を、宇宙から探索しているのです。

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