コンパクトな未知のガンマ線源
最近の研究では、宇宙に存在する反物質や暗黒物質を検出するため、国際宇宙ステーション(ISS)にアルファ磁気スペクトロメータ(AMS)と呼ばれる15億ドルもする高価な機器を取り付けた実験が行われています。
ここで、研究は宇宙から2つの反陽子と2つの反中性子から構成される原子核を持った、アンチヘリウム(ヘリウムの反物質)のように見えるものを検出しました。
しかし「アンチヘリウムは物理学的にはかなり複雑なものであり、既知のプロセスで自然に発生することはない」
と、今回の研究の筆頭著者であるフランス・トゥールーズ大学の天体物理学者サイモン・デュプルケ(Simon Dupourqué)氏は述べています。
ではアンチヘリウムはどこからきたのでしょうか?
考えられる可能性は、宇宙のどこかに反水素をアンチヘリウムに核融合させることで光を放つ反物質の星が存在しているということです。
しかし反物質星は、反物質を核融合させていますが、それ以外は通常の星と区別することができません。
普通に観測を行って、この星を見分けることはかなり困難なのです。
けれど、物質と反物質が出会うと、対消滅を起こしガンマ線やニュートリノを生成して消え去ります。
もし、反物質星が存在していて、それが通常物質のガスなどに出会って衝突した場合、そこは過剰なガンマ線の発生源になる可能性があるのです。
そこで今回の研究チームは、NASAのフェルミガンマ線望遠鏡のデータを組み合わせて調査を行いました。
その結果、これまでの星表(恒星目録)には記録されていなかった、コンパクトなガンマ線の輝きを14個発見したのです。
これらは天の川銀河のハローに発見されていて、既知のガンマ線発生天体ではないと考えられています。
だからといって、研究チームはこれが反物質星だと主張しているわけではありません。
デュプルケ氏はこれらが、まだ知られていないガンマ線発生源となる「反物質星以外の他のものである可能性の方がはるかに高い」と語っています。
しかし、「もしこれが反物質星だった場合、宇宙形成理論の考え方を変える必要があるだろう」と、彼は付け加えています。
少なくとも、今回の研究は反物質星の可能性がある天体の数に制限を加えています。
それは天の川銀河1000億の星の中で、多くとも14個程度の可能性があるのです。
現在の標準的な考えが通用しないような天体は、果たしてこの宇宙に存在しているのでしょうか?