赤道に近いほど感染者が減る新型コロナウイルス
ドイツ・ハイデルベルク大学をはじめとした研究グループは、パンデミックの始まりから2021年1月9日までの、COVID-19蔓延に関する117カ国のデータを分析しました。
今回研究グループが着目したのは、COVID-19の広がりと国の緯度との関係です。
この分析では、世界保健機関のデータを使用して、飛行機での旅行者数、医療費、高齢者と若者の比率、経済発展状況など、発症数に影響を与える要因は取り除くように管理されています。
これにより分析では、緯度による国ごとの日光の量や温度・湿度と、感染拡大レベルの関連性が比較できたのです。
結果、赤道から国の緯度が1度増加するごとに、100万人あたりのCOVID-19症例数が4.3%増加することが明らかとなりました。
これはつまりある国が別の国と比較して、赤道に約1000km近い場合、その国は100万人あたりのCOVID-19感染者数が33%少なくなる予想です。
「今回の結果は、気温と日光がSARS-CoV-2の拡散とCOVID-19の流行を抑制するという仮説と一致します」研究グループはそのように述べています。
この理由について、研究者は「夏の高温と、強い紫外線がSARS-CoV-2を含むウイルスへの公衆衛生をサポートしている可能性が高い」と述べています。
実際、北半球で日の光が弱まる冬季に新型コロナウイルスの発症数が増加していた事実とも、研究結果は一致しています。
しかし、温暖な気候の地域でCOVID-19がなぜ減るのかの明確なメカニズムは不明のままです。
研究者は、これが従来の推測と同様に、温暖な地域では人が屋内に密集することが少ないためである可能性も否定できないと論文に記しています。
そのため、より条件を細分化した研究が、今後は必要となってくるでしょう。
なんにせよ、夏になれば現在の混乱はいったん収まるのでしょうか?
研究者は「今回の研究が、夏になればこの病気が消えるとか、赤道に近い国は影響を受けないことを意味するわけではない」、と警告しています。
特に今回の研究データには、南アフリカと英国で出現した変異型が流行する前の2021年1月9日までのデータしか含まれていません。
当然、現在インドで猛威を奮っている変異型についても分析対象外です。
そのため、これらの新しい変異型が、今回報告されたウイルスの季節性パターンに従うかどうかは不明。
それでも、新たに示された統計分析は、緯度によって症例数が減少することを示しており、この忌まわしいウイルスを封じ込めるための何らかの方法があることを教えてくれています。
これが今後ウイルスと戦っていくための希望につながっていくかもしれません。