体内時計がズレない謎
体内時計はすべての生物の中にある1日のリズム(概日リズム)を刻むメカニズムです。
時差ボケとか、不眠症などの問題は、この体内時計が狂ってしまうところから来ています。
体内時計は私たちの体調や脳機能、精神的な安定にも関連していることがわかっていて、うつ病も概日リズムが狂ってしまうところに原因の一端があります。
そして、この体内時計はヒトからバクテリアまで、あらゆる生物が持っています。
現在、1日のリズムを作る発生機関は、時計遺伝子による転写ループというものが重要であることがわかっています。
最初の時計遺伝子は2017年に米国の3人の研究者によってショウジョウバエから発見されました。
その後、時計遺伝子は哺乳類や植物などさまざまな生物から見つかりましたが、それぞれが異なっていたため、生物種ごとに独立進化してできたものだと考えられていました。
ただ、こうした時計遺伝子の転写ループが体内時計の本体と考えると、不自然な部分がありました。
それが体内時計の温度補償性という問題です。
温度補償性とは体内時計が環境温度によらず一定の周期を保つ性質のことです。
しかし、時計遺伝子の転写ループは温度が10℃下がると反応速度が半分近く下がってしまいます。
つまり、時計遺伝子だけで体内時計が構成されていると、温度変化で1日のリズムが48時間、72時間とどんどんズレていってしまうのです。
けれど実際そうはならず、体内時計には温度補償性があります。
そのため、何か見落としている仕組みがあるはずだと、70年近く前から言われてきたのですが、それが何なのかはずっと謎のままでした。
しかし、東京大学などの研究チームは、今回初めて、その仕組みと考えられるすべての生物に共通する体内時計最古の部品を発見したのです。