ヤドカリは「暗色の貝殻」を住居に選ぶ
研究チームは、ヨーロッパタマキビ(Common periwinkle)の空の貝殻を大量に用意し、「白」と「黒」に塗り分けました。
それから、野生のヨーロッパホンヤドカリ(Common hermit crab)を採捕し、現在の住居から引き抜いた状態にします。
最初の実験は、明るい照明のタンクに67匹のヤドカリを入れ、それぞれの前に白と黒の貝殻を2個ずつ設置し、どちらの貝殻を選ぶかを観察。
これと別に、他の60匹のヤドカリも準備し、今度は真っ暗なタンクのもとで同じ実験をしました。
その結果、暗いタンクでは色が識別できないので、殻はランダムに選択され、白と黒の半々となりましたが、明るい照明の場合、ヤドカリの3分の2が黒塗りの貝殻を選択したのです。
これはヤドカリが暗色の貝殻を好むことを示唆します。
次の実験で、チームは、背景色が貝殻の選択に影響するかを調べました。
まず、明るい照明のもと、背景が真っ黒のタンクと真っ白のタンクを用意し、それぞれに白と黒の貝殻を20個ずつ設置。
96匹のヤドカリを対象に、一度に12匹ずつタンクの中に入れて、24時間の選択時間を与えました。
同時に、貝殻と背景の色を「赤」と「黄色」に変えた条件でも行っています。
結果、ヤドカリは全体として、背景に対し暗色の貝殻(黒と赤)を選ぶ傾向にありました。
背景が暗色(黒または赤)の場合、明るい貝殻(白と黄色)を選んだヤドカリは、全体の25%未満となっています。
一方で、背景が明色(白または黄色)の場合は、ヤドカリの40%が明るい貝殻を選んでいました。
これは貝殻の色が背景に溶け込むので、カモフラージュとして役立つことを重視していると考えられます。
研究主任のジェームズ・リマー氏は「今回の結果から、ヤドカリは貝殻と背景の両方の色を考慮していることが示されました。
その中で、貝殻自体の暗色を重視するか、背景に溶け込むカモフラージュを重視するかは、それぞれのヤドカリの個性に大きく依存していると思われます。
また、色に加えて、形や重さ、サイズ、強度などの条件も貝殻の選択に関わっているでしょう」と述べています。
生き残るためには住居と環境の色もよく考えなければならないようです。