ズレていく人ぞれぞれの時間感覚
ミューレン氏もゲームが持つ時間圧縮効果に関する先行研究は知っていました。
そこで、VRゲームがプレイヤーの時間感覚に与える影響が、従来のモニターを介したゲームとどのように違うのかを知りたいと考え、両方のフォーマットでプレイできる迷路ゲームをデザインしました。
実験の参加者は、同じサンタクルーズ校の学部生41名に協力してもらいました。
参加者は、この迷路ゲームをモニターとVRヘッドセットの両方でプレイし、「5分経ったな」と感じたらゲームを中断してもらいました。
モニター版とVR版は、それぞれ迷路の構造が異なっていて、どちらから始めるかはランダムに決定しました。
ゲームプレイ中、参加者には時計が見えないようにしているので、時間の推定は各人の時間感覚に基づいています。
実験の結果、VR版のゲームを最初にプレイした学生は、モニター版ではじめた学生と比べて、5分経過したと感じるまでに平均で72.6秒も長くプレイすることがわかりました。
つまり、VR版のプレイヤーは、モニター版のプレイヤーと比べて28.5%も時間圧縮されていたことになります。
この時間圧縮効果は、VR版を先にプレイした参加者にのみ確認されました。
これは、ゲーム形式に関わらず、参加者は1回目のゲームで見積もった時間を基準にして、2回目のゲーム時間を判断したためだと考えられます。
となると、今回の結果は、明らかにVRに強い時間圧縮効果があったと示すことになります。