掻きむしった皮膚から寄生虫が湧き出す芽殖孤虫の全ゲノムが解読される
掻きむしった皮膚から寄生虫が湧き出す芽殖孤虫の全ゲノムが解読される / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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致死率ほぼ100%、皮膚から湧き出す「最凶の寄生虫」の全ゲノムを解読 (2/4)

2024.07.23 Tuesday

前ページ体を喰いつくす「芽殖孤虫」は動物の犠牲で維持されてきた

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「芽殖孤虫」は卵を産まず体を分裂させて増える

芽殖孤虫は永遠に幼虫のまま、出芽・分裂を繰り返して増殖する
芽殖孤虫は永遠に幼虫のまま、出芽・分裂を繰り返して増殖する / Credit:菊地泰生(宮崎大学)- 謎の寄生虫「芽殖孤虫」のゲノムを解読 -謎に包まれた致死性の寄生虫症「芽殖孤虫症」の病原機構に迫る-(2021) / ナゾロジー改変

遺伝解析を行うにあたり、研究チームはまず、マウス体内で維持されてきた「芽殖孤(がしょくこちゅう)」と、日本のシマベビから採取した「マンソン裂頭条虫(れっとうじょうちゅう)」からDNAを抽出しました。

結果、芽殖孤虫のゲノムは6億5000万塩基対からなり、遺伝子総数は1万8919個であると判明。

これはヒトのゲノム(30億塩基対)と比べると小さいものの、エキノコックス(約1億500万塩基対)や回虫(2億7000万塩基対)など他の寄生虫よりはかなり大きな値です。

また芽殖孤虫のゲノムはマンソン裂頭条虫(8億塩基対)と似ている部分があったものの、塩基配列およびゲノム数からも明らかに別の生物であると判明します。

かつて芽殖孤虫はマンソン裂頭条虫の異常個体であるとする説がありましたが、今回の研究によって完全に否定されました。

ですがより興味深い発見は、個々の遺伝子解析によってみえてきました。

芽殖孤虫に含まれる遺伝子を調べた結果、卵から体を作るために必要な「個体発生」にかかわる遺伝子や有性生殖に必要な10個の遺伝子について重要度(選択圧)が低下していることが判明。

また神経系を作る遺伝子や体の前後を決める遺伝子(Hox1)など、体の正しい形成に重要な遺伝子のいくつかが失われていることも判明します。

この結果は芽殖孤虫は卵を産む成虫段階が存在せず、増殖がもっぱら出芽・分裂という無性生殖に依存していることを示します。

そしてこの無性的な増殖が芽殖孤虫の病原性の強さに直結していると考えられます。

ただ興味深いことに芽殖孤虫の全ての虫体が終末的な増殖を起こすわけではありませんでした。

「芽殖孤虫」は異なる2タイプがあったのです。

次ページ分裂が盛んなメデューサ型は未知のタンパク質を分泌している

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