うつ病患者の3分の1は、通常の治療法で効果なし
専門家によると、うつ病患者の3分の1(アメリカでは最大1700万人)が、脳内のセロトニンおよびノルアドレナリン受容体を刺激する標準的な抗うつ治療に反応しないことが分かっています。
本研究には参加していませんが、米・スタテンアイランド大学病院(Staten Island University Hospital)の精神科医、ティモシー・サリバン氏は「現在の最高の投薬治療をもってしても、うつ症状の改善が見られない患者が多数いる」と指摘。
「治療抵抗の強いうつ病に対しては、脳に電極を埋め込む脳深部刺激法や、ペースメーカーのような装置を埋め込む迷走神経刺激法などがありますが、どれも簡単ではありません。
そのため、利用しやすくて、効果の高い新たな治療法が必要とされている」と述べています。
その一つとして、ケタミン(麻酔薬)の一種である「エスケタミン」が注目されています。
一部ではありますが、治療抵抗性うつ病の症状緩和にも成功しており、2019年には、アメリカ食品医薬品局(FDA)により抗うつ薬として承認されました。
エスケタミンは、受容体の一種である「NMDA型グルタミン酸受容体」に結合することで作用します。
この同じ受容体に結合することで知られているのが、笑気ガス(亜酸化窒素)です。
そこで、セントルイス・ワシントン大学のチャールズ・コンウェイ氏と、シカゴ大学(University of Chicago)のピーター・ナーゲレ氏は「笑気ガスに、治療抵抗の強いうつ病に対する高い緩和効果があるのではないか」と仮説を立て、実験を開始しました。