超大質量ブラックホールの死の瞬間
強力なエネルギーを放出して明るく輝く超大質量ブラックホールを活動銀河核(AGN)と呼びます。
宇宙でもっとも明るい天体と呼ばれるクエーサーも活動銀河核の1種と考えられています。
ブラックホールそのものは強力な重力で光さえ吸い込んでしまうので、直接輝くことはありません。
しかし、ブラックホールの周りに物質(ガスや塵)が落下すると、それは重力エネルギーを開放して、強烈な光を放ちます。
天文学者は、こうした活動銀河核の輝きを見ることで、超大質量ブラックホールがどのように成長(質量の増加)していくかを研究することができるのです。
宇宙で発見される超大質量ブラックホールは、太陽質量の100万倍~100億倍もあるものが確認されています。
太陽の100億倍というは途方もない大きさですが、無限に巨大化したブラックホールというものは見つかっていません。
そのため、いずれは超大質量ブラックホールも、その激しい活動を終えるときが来ると考えられます。
しかし、いったん活動を終えてしまえば、ブラックホールは急激にその輝きを失って観測不可能となってしまうため、その瞬間を捉えることは非常に困難です。
活動銀河核の終焉は、未だよくわかっていない、天文学の解くべき謎の1つなのです。
けれど今回、その困難な観測を実現させる新たな研究が登場しました。
東北大学学際科学フロンティア研究所の市川幸平助教らの研究チームは、活動銀河核が作り出す周辺の環境の変化をうまく利用することで、「死につつある活動銀河核」を発見し、その終焉の瞬間を観測することに成功したのです。