偏った成長をする地球のコア
カリフォルニア大学バークレー校の地球惑星科学科大学院教授で、バークレー地震研究所(BSL)の名誉所長であるバーバラ・ロマノヴィッチ(Barbara Romanowicz)氏によると、インドネシアのバンダ海の方向に面する地球のコアが早く成長しているのだといいます。
これは地球内部を伝わる地震波の観測から明らかとなった事実です。
コアの成長は、地球内部で溶けた鉄が冷えて結晶化することで進んでいきます。
地震波による今回の研究は、バンダ海下のコアの東半分が、ブラジル下にあるコアの西半分に比べて、60%も多くの鉄の結晶を蓄積していることを発見したのです。
こんなことをいわれると、地球のコアがどんどん歪んでいって大変なことになるんじゃないか、と不安にかられてしまいますが、先に言っておくとそういう事態にはなりません。
地球のコアが成長した際、新しい鉄の結晶は地球重力によって均等に分散されていくため、球状はきちんと維持されます。
そのため地球コアは、年平均で半径が1ミリずつ均等に大きくなっています。
では、ここでいう成長速度の偏りというのは、なんなのでしょうか?
それは、インドネシアの下にあるマントルや外核の何かが、反対側のブラジルの下と比べて、早く内核から熱を奪い、鉄を結晶化させているということです。
つまり地球内部は、何らかの理由によって片側が早く冷却されているようなのです。
なぜ、そのようなことが起きているのかは、現時点では不明です。
ただ、原因は地球の上層にあるだろうと考えられます。
研究チームの地震学者、ダニエル・フロスト氏によると「地球のすべての層は、その上にあるものによって制御されいる」といいます。
「内核は、液状の外核をゆっくりと固めて雪だるまのように成長します。
外核はその上のマントルによって冷却されています。
そのため、なぜ内核の片側がより早く成長するのか? という疑問は、なぜ片側のマントルが他よりも冷えているのか? という問題につながっているのです」
フロスト氏は、これが構造プレートに原因がある可能性が高いと述べています。
冷たい構造プレートが沈み込み帯から地球深部に潜るとき、その下のマントルは他より冷却されることになります。
ただ、この考え方にはまだ不明確な部分が多く、答えを出すにはまだ多くの議論が必要となるでしょう。
ひとまずコアの成長が偏る原因は、これからの研究に委ねることにしましょう。
では、私たちが次に疑問に思うことは、こうしたコア成長の偏りが地球にどんな影響を与えるのか? ということです。