観客がいないと男性は遅くなり、女性は速くなる
男性の調査結果はハインリッヒ氏の予想どおりでした。
男性アスリートは観客がいると、クロスカントリースキーでより良いタイムを出し、ライフル射撃の成績は悪くなっていました。
この結果は、これまで「一般的」だと考えられてきた社会的促進効果と同じです。
ところが女性の場合は、まったく逆の結果になりました。
女性アスリートは観客がいると、クロスカントリースキーのタイムが落ち、ライフル射撃の成績は上昇したのです。
つまりスタミナを必要とする競技では、観客がいないと男性は遅くなり、女性は速くなるのです。
今回の研究の対象はスプリント種目のバイアスロン選手83名、マススタート種目のバイアスロン選手34名であり、いずれも同じ傾向が見られました。
そのため研究チームは、得られた男女差による傾向を偶然ではなく、根拠のある結果として捉えています。
では、なぜ男女で社会的促進の効果に差が出たのでしょうか?
ハインリッヒ氏は「男女特有の固定観念が影響しているかもしれない」と述べています。
現段階では憶測することしかできないので、この点はさらなる研究が必要でしょう。
とはいえ、今回の結果はこれまで知られてきた理論の一般性に疑問を投げかけるものとなりました。
今後は男女差にも焦点を当てた研究がより正確な理論を構築するのかもしれません。