遠いサヘル地域の気候が日本に届くわけ
サヘル地域は雨季と乾季が明確に区別されたサバナ気候で、雨季は6月~9月にやってきます。
このときサヘル地域一帯は、広く上空が雨雲におおわれ、大量の雨が降ります。
雲は上空で水蒸気が周囲に熱を放出し水に変化することで発生します。
そのため雲が発生すると、周囲の大気の温度が上がる凝結加熱というものが起こります。
サヘル地域の雨季のように、大量の雲が広域に発生した場合、それは大量の凝結加熱を大気中に引き起こすのです。
これは、アフリカ北部上空の高気圧を強める原因となります。この強化された高気圧はヨーロッパ上空に吹く偏西風を蛇行させます。
この偏西風の蛇行は、遠くアジア地域にまで続いていきます。
偏西風は通常真っ直ぐに吹きますが、これが南北に大きく蛇行して遠くまで続いた場合、その山と谷に対応する場所に長く停滞する高気圧と低気圧を発生させます。
結果的にこれは、その地域に異常気象を引き起こす原因となります。
そして日本上空では、この偏西風の蛇行により、強い高気圧が張り出すのです。
遠いサヘル地域の雨雲により発達した高気圧が、偏西風によってまるで電界と磁界で伝わる電磁波のように、低気圧と高気圧をつなげて伝わってくるわけです。
高気圧が強まると、雲がなくなるため日差しが地上に届きやすくなり、また大気が圧縮されるため気温が高くなります。
これがサヘル地域の雨雲が、日本に猛暑を引き起こすメカニズムです。
実際、日本で観測史上最高の猛暑を記録した2018年には、サヘル地域でも記録的な雨量が観測されています。
近年サヘル地域の雨量は増加に転じていることが報告されています。
この傾向が続く場合、日本も今後は猛暑が頻発することになるでしょう。
人間にとっては、何の関連も見いだせないような遠く離れた地域の天気でも、地球にとってはすべてが連鎖してつながった巨大な大気の運動です。
この地球全体の大気の動きが乱れることで、日本の天気もおかしくなるというのが地球温暖化の影響としてもっとも恐ろしい部分でしょう。
風が吹くと桶屋が儲かるように、サヘルで大雨が降ると日本で猛暑が起きるのです。
※この記事は2021年7月公開のものを再掲載したものです。