筏のフォーメーションには規則があった!
チームは、水の入った容器の中央に棒を設置し、そこへ一度に約3000〜1万匹のアカヒアリを投入する実験を複数回おこないました。
水に落ちたヒアリは、棒を中心に寄り集まって、筏をつくります。
ここまでは予想通り。
次にチームは、画像追跡データとコンピュータのモデリング技術を使って、筏のどの部分が静止していて、どの部分が動いているのかを分析。
その結果、筏は層構造になっており、ヒアリのグループも2つに分かれることが判明しました。
1つは、水面側に密集して静止しているグループで、こちらはコロニーを水面に浮かすよう努めます。
もう1つは、その上にいるグループで、筏の上を四方八方に歩き回っていました。
そして、このグループ間で循環が起こっており、上を歩くヒアリたちは順次、下で支えるメンバーと交代していたのです。
たとえば、筏の中心部に近い場所の下層にいたヒアリは、一度上に上がってきて(青〜赤)、筏の外縁部まで歩き(赤〜赤)、また下層へと戻っていきます(赤〜青)。
この循環を通じて、筏の大きさを収縮させたり拡大させたりし、あるいは触手のような長い橋を形成することもできるのです。
長い触手は、近くにある漂流物や土地へとコロニーが乗り移る際に使用されます。
ヒアリたちは、循環型のフォーメーションによって、安定した浮力を実現させていたようです。
ヒアリの行動は季節や時間帯、生息環境によって変化するため、筏の生成メカニズムにもまだ謎があると考えられます。
研究チームは今後、これらの環境要因を踏まえて、筏の力学をさらに追究していく予定です。