毒を編集する
毒を編集するとは、具体的にどうやるのでしょうか?
ここで活躍するのが、ワシントン大学が開発した「ロゼッタ(Rosetta)」と呼ばれるコンピュータプログラムです。
この複雑なモデリングソフトは、タランチュラのペプチドのさまざまなバリエーションを作成することができ、その設計を元に実験室で合成テストを行うのです。
計算機構造モデリングの専門家であるヤロフ・ヤロボイ(Yarov-Yarovoy)氏は、「ロゼッタを使えば、天然のペプチドを再設計して治療薬にすることができます」と語ります。
すでに研究チームは、モルヒネレベルの有効性を示しながら、オピオイドのような副作用を起こさないバージョンのペプチド開発に成功しています。
ただ、これはまだ予備的な結果に過ぎません。
非常に有望な結果を示してはいますが、まだ多くの課題が残っています。
これを改善させるためには、まず動物実験によって安全性の確認を行い、その後は、実際にヒトに適用して慎重に実験を進めていく必要があります。
研究チームは、この新しい薬が完成するまでには少なくともあと5年は必要だと見積もっています。
研究を主導するハモック教授は、「非常に良いチームを集めることができた」と述べ、きっと痛みを和らげる素晴らしい薬ができるだろうと語っています。
生物が進化する中で作り上げてきた神経毒が、人類にとって新たな薬となる日も近そうです。