リアルなロールプレイが秘める精神効果
日本で「ロールプレイ」というと、ドラクエやファイナルファンタジーのようなロールプレイングゲームの印象が強いかと思います。
しかし家庭用ゲーム機が普及する前のロールプレイは、人間の進行役を中心にした人間同士の会話によって進行する「テーブルトークゲーム」が主流でした。
同じセリフしか繰り返さないプログラムと違って、人間同士の連携が紡ぐストーリーは、非常にリアルなものとなりえます。
以前から心理療法士たちは、このリアルな人間同士の関係をうみだせる「ロールプレイ」を対人恐怖症などの社交不安障害の治療に転用してきました。
ロールプレイには他人と上手く会話をできず挙動不審に陥ってしまう人を訓練できる可能性を秘めています。
ロールプレイを用いた治療の結果は良好であり、社交不安障害の治療に大きな成果をあげます。
そのため主に海外では、よりリアルさを実現するために、専門の監督の雇用や大規模な舞台配置、小道具の使用といった大掛かりなロールプレイ治療が行われているそう。
またこれまでの研究により、ロールプレイ体験は健康な人の精神に作用することも知られています。
たとえロールプレイであっても真剣に演じることで、人間の心を変質させてしまう効果があるようです。
しかし、既存のロールプレイを用いた治療には限界があり、社交不安障害者たちの自分に対する負の感情を容易に取り払うことができませんでした。
そこで今回、オランダのアムステルダム大学の研究者たちは、既存のロールプレイを用いた治療に、とある要素を新たに組み込んだのです。