「人そっくりの歯」で貝類をバリバリ食べる
魚は、大西洋に面するジェネット桟橋(Jennette’s Pier)にて、地元の釣り人により釣り上げられました。
メリーランド州天然資源局(Maryland Department of Natural Resources)によると、この魚は新種ではなく、「シープスヘッド・フィッシュ(学名:Archosargus probatocephalus)」というスズキ目タイ科の既知種です。
名前は、頭や口先が羊に似ていることに由来し、これと別に、黒と白のシマシマが囚人服に似ていることから、「囚人魚(convict fish)」という不名誉なあだ名も付いています。
本種はおもに、ニューヨークからブラジルまでの大西洋沿岸でよく見られ、ニューヨークのブルックリンにあるシープスヘッド港(Sheepshead Bay)の由来にもなっています。
体長は最大で90センチ、重さは約9キロにもなり、その頑丈な歯で、カキやアサリ、甲殻類をバリバリと食べます。
他にも海藻類や軟体動物を好物としており、こうした雑食性が、人と同じような鈍くてずんぐりとした歯を作り出したようです。
アメリカの科学雑誌『Scientific American』によると、成熟したシープスヘッドは、上あごに3列、下あごに2列の臼歯を持ち、獲物の硬い殻でも噛みくだけるようになっているという。
最も人の歯に近いのは前歯で、これまで人と同様にエナメル質に覆われています。
一方で、最初から頑丈な歯を持っているわけではありません。
稚魚のうちは歯が小さいので、おもに藻類や軟体動物を食べ、成長とともに歯が丈夫になると、貝類を食べ始めます。
しかし、これだけ強い歯を持っているなら、泳いでいる人を噛み付いたりしないのでしょうか?
カリフォルニア科学アカデミー(California Academy of Sciences)の魚類学者であるデビッド・カターニア氏は「こちらがちょっかいを出さない限り、攻撃してくることはない」と言います。
ただし、シープスヘッドは食用に適しており、よく釣り人に狙われるので、捕獲後に鋭い尾びれなどで指をケガすることはあるようです。