ビタミンAはドミノの最初の1枚を押していた
前述したように、進化的にみれば目は脳の領域の1つです。
そして胎児期の脳を模倣する脳オルガノイドにはもともと、目になるための専用の細胞が準備されています。
ここで重要なのは、目になる準備をしていた細胞たち(間葉)は、準備状態に留まるために、ある種の信号(パラクリン)を出し合っていたということです。
細胞の準備状態(未分化・未熟)というのは、エネルギーを必要としない単なる待機ではなく、お互いに信号を送り合って維持する、コストを要する状態の場合もあったのです。
そしてビタミンAは、この準備状態を維持するための信号を、遮断する効果があると考えられています。
準備状態が解かれると細胞たちは、外部からの助けなしに、自律的に目を形成しはじめます。
目という非常に複雑な器官が、ビタミンAのような単一の成分をキッカケにして、自律的に構成されていくのは生命の神秘と言えるでしょう。