マウスの20匹中19匹で腫瘍が完全に消滅した
mRNAとは細胞に対して特定のタンパク質を作るように指示する分子です。
新型コロナウイルスのワクチンに含まれるmRNAも、ウイルスの体の一部(スパイク)を作る指令が含まれており、体内に注射されるとウイルスの断片を生産し、免疫の訓練を促します。
そこで今回、BioNTechとファイザーの研究者たちはmRNAの持つ命令能力を、がん治療に転用する方法を開発しました。
mRNAに、がんとの闘いを有利にするタンパク質の生産命令を乗せることができれば、治療に大きく役立つと考えたからです。
研究者たちは様々なタンパク質の生産命令を込めたmRNAを、がんになったマウスに注射し、効果が現れるかを確かめていきました。
結果、サイトカインの一種である4つのタンパク質(インターロイキン-12単鎖、インターフェロン-α、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、およびIL-15‐sushi)の生産命令(mRNA)が、がん細胞に対して有効であると判明します。
またこの4種類の生産命令(mRNA)を混合して、黒色腫(皮膚がん)になったマウスの腫瘍に注射したところ、20匹中19匹(95%)において、40日以内に腫瘍が完全に消滅したことが確認されます。
これまで様々ながん治療方法が開発されてきましたが、これほどの高い確率で腫瘍を完全に消滅させた例は非常にまれです。
さらに、mRNA混合物を注射されたマウスには副作用が示されず、治療期間中に体重が減少することもありませんでした。
この結果はmRNA技術が、体に負担のないがんの根治(完全治療)に有効であることを示します。
しかし、なぜサイトカインの生産命令(mRNA)を注射しただけで、がんが消滅したのでしょうか?