新たな研究は冥王星の大気密度が低下していることを確認した。これは太陽から離れた軌道では、窒素が表面で再凍結するために起こっている。
新たな研究は冥王星の大気密度が低下していることを確認した。これは太陽から離れた軌道では、窒素が表面で再凍結するために起こっている。 / Credit:NASA/JHUAPL/SwRI
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冥王星の大気は薄くなっていると明らかに

2021.10.08 Friday

太陽系の惑星の仲間からは外されてしまいましたが、冥王星は太陽系の遠い軌道を回る興味深い天体として、現在も観測が行われています。

米国サウスウエスト研究所(Southwest Research Institute:SwRI)が主導した天文学チームは、米国とメキシコの広い地域に望遠鏡を展開し、冥王星が背後の恒星を隠す現象を利用して、一時的な逆光からその大気量を測定することに成功しました。

その結果、冥王星の大気密度は以前の観測よりも低下しており、冥王星が太陽から離れていくことで大気が表面で再凍結するという有力な証拠を発見したのです。

この成果は、10月4日に『第53回米国天文学会惑星科学部門年次総会( the 53rd American Astronomical Society Division for Planetary Sciences Annual Meeting)』で発表されています。

SwRI SCIENTISTS CONFIRM DECREASE IN PLUTO’S ATMOSPHERIC DENSITY https://www.swri.org/press-release/scientists-confirm-decrease-plutos-atmospheric-density

星の逆光を利用した観測

2018年8月15日に本研究チームが撮影した冥王星の掩蔽現象。
2018年8月15日に本研究チームが撮影した冥王星の掩蔽現象。 / Credit:NASA/JHU-APL/SwRI

天体が別の天体の前を通過して隠すことを「掩蔽(えんぺい)現象」、または「星食」と呼びます。

この現象を利用すると、冥王星が背後の恒星を隠したとき一時的に発生する逆光から、冥王星の大気状態を調べることができます

1988年以降、天文学者たちは、この観測方法によって定期的に冥王星の大気変化を観測していて、2015年にはNASAの探査機「ニューホライズン」によって詳細な大気密度が測定されました。

これらの観測からは、冥王星の大気がおよそ10年ごとに倍増しているという傾向が確認されていました。

しかし、2018年に行われた掩蔽(えんぺい)現象を利用した冥王星の観測からは、この大気の増加傾向がなくなっているとわかったのです。

掩蔽現象は約2分間続きます。

この間、背後の恒星の光は大気中を通って減衰し、また徐々に明るさを戻していくため、U字型の光度曲線が確認されます。

しかし、ときおりこのU字型の光度曲線の中央に、「セントラルフラッシュ(central flash)」という光度が急に上がるスパイクが確認されることがあります。

これは、恒星が冥王星の完全に背後に隠れた状態の時、冥王星を包む大気によって恒星の光が屈折し、まるでレンズの様に機能して、一時的に地球へ向かう光を集中させることで発生する現象です。

大気により屈折した光なので、このセントラルフラッシュの強度からは冥王星の大気密度が分析できるのです。

掩蔽現象の最中、光度が突然上がるセントラルフラッシュが確認されることがある。これは冥王星の大気密度と関連する。
掩蔽現象の最中、光度が突然上がるセントラルフラッシュが確認されることがある。これは冥王星の大気密度と関連する。 / Credit:canva,ナゾロジー編集部,(光度曲線はSwRIの観測データ)

2018年の観測で確認されたセントラルフラッシュは、これまで誰も見たことがないほど強いものでした。

そしてそれは冥王星の大気密度が、これまでの観測より低下していることを示す証拠だったのです。

2018年8月15日に観測された冥王星掩蔽現象では、これまでにない強いセントラルフラッシュが確認された。
2018年8月15日に観測された冥王星掩蔽現象では、これまでにない強いセントラルフラッシュが確認された。 / Credit:SwRI SCIENTISTS CONFIRM DECREASE IN PLUTO’S ATMOSPHERIC DENSITY(2021)

しかし、これまで増加傾向が確認された冥王星の大気が、なぜ2018年の観測では低下していたのでしょうか?

それは冥王星の軌道に秘密があります。

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