中性子の寿命とは?
寿命という言い方をされると、「中性子って死ぬの?」と思う人もいるかもしれませんが、素粒子の寿命とは私たちが普段考える生まれてから死ぬまでの時間というものとは少し異なります。
素粒子はいつ誕生したかという問題とは関係なく、一定時間が過ぎると決まった割合で崩壊していきます。
ある粒子の数が1/e(eは自然対数の底、値は約2.72)に減るまでの時間を、素粒子の寿命と呼ぶのです。
そのため、ある粒子が100個あって、これが1時間後に37個に減ったとすると、この粒子の寿命は1時間ということになります。
どの粒子がいつから存在していて、どのくらいの期間存在できたかという問題は、特に関係ありません。
素粒子は確率的にしかその振る舞いを論じることができないため、どの素粒子がいつ崩壊するかという話をすることができません。
そのため集団の中でどれだけの数がどのくらいの時間で崩壊するか、という方法でしか論じることができないわけです。
アインシュタインは、量子力学のそういうところが嫌いだったようですが、それはまた別のお話です。
では、中性子が寿命でなくなるというのは、どういうことなのでしょうか?
私たちがよく知るように、中性子は陽子とともに原子核を構成する粒子の1つです。
原子核に束縛されている中性子は基本的に安定していますが、単体で存在する自由中性子は、およそ15分ほどで電子やニュートリノなどを放出して崩壊し、陽子になってしまいます。
これをβ(ベータ)崩壊と呼びます。
中性子の寿命の謎とかいっておいて、15分ってわかってるじゃん、と思う人もいるかもしれませんが、実はここが少し曲者でだいたいはわかっていても正確にはわからなかったのです。