ロボトミーは一部では「お金」のために行われていた
精神病院など、患者を管理する側にとっては、攻撃的で世話がかかる患者に対処するには警護員を雇うなど、多くのコストがかかりました。
一方、ロボトミーによって患者の攻撃的な人格が消失したり植物状態になれば、少ない人員でも管理がしやすかったからです。
そのためアメリカでは1970年代までに2万人以上がロボトミー手術を受けさせられました。
ですがなかには、患者の同意をとらずに手術が行われた例や、囚人に対して命令に従いやすくするために行われたと疑われるケースも存在しました。
患者の健康から病院の都合に目的が移動したことで、ロボトミーの乱用がはじまったのです。
日本においてもロボトミー手術が取り入れられていた時期もあります。
全国で523件のロボトミー手術を行った廣瀬貞雄氏の記録によれば、
優れた効果があったものは8%
良好な効果があったものは11%
軽度の改善があったものは27%
僅かな改善があったものは27%
全く効果がなかったものは20%
悪化が4%
死亡が3%
とのこと。
廣瀬貞雄氏はロボトミー手術については、次のように述べています。
「ロボトミーの本質が人格の変化にあるならば人道的問題がある。
しかし手術から時間を置いた印象では、極端な病状の患者や爆発的(極めて危険)な患者に対しては、変化後の人格に関して本人がそれほど問題にしていないことからも、人道的に許されてもいいと思う」
ただ患者が気にしていないとの意見については、疑問が残ります。
日本においても、ロボトミー手術の後に、創造性が奪われたとして患者が執刀医とその妻を殺害した「ロボトミー殺人事件」が有名です。
またロボトミーの生みの親として1949年にノーベル生理学賞・医学賞を受賞したモニス氏も、65歳のときに自らの患者に銃撃を受けて半身不随になり、その後の人生を障がい者として過ごしました。