植物はRNAを「手紙」にして隣人と会話していたと判明!
近年の研究により、植物には思ったよりもコミュニケーション能力があることがわかってきました。
代表的な例では、キリンに食べられている「アカシア」の木があげられます。
アカシアの木はキリンに葉を食べられると、樹木からエチレンやサリチル酸メチルといった揮発性物質(ガス)を分泌して、近隣のアカシアの木に「食べられているから注意しろ」という情報を送ります。
すると不思議なことに、ガスを感知した周囲のアカシアの木の葉は毒素である「苦味成分」を多く生産して、キリンの捕食に対抗します。
ですが今回、サンターナ大学院大学の研究者たちは、植物たちが遺伝情報の記録にも使われるRNAを用いて、ある種の会話を行っていることを突き止めました。
発見のキッカケは、いくつかの偉大な発見がそうであるように、偶然でした。
研究者たちは当初、開花を遅くする働きがある短いRNA(miR156)を製造する変異シロイヌナズナを水耕栽培で育てていました。
短いRNAは長いmRNAに結合して利用不能にすることが知られており、遺伝子の働きの調整などに用いられています。
すると奇妙なことに、すぐ隣で育てていた全く別株の野生型のシロイヌナズナの開花までが、遅くなっていたのです。
不審に思った研究者が両方の植物たちの根が伸びている水槽の水を調べたところ、短いRNA(miR156)が含まれていることが判明。
そこで研究者たちは変異シロイヌナズナから抽出した短いRNA(miR156)だけを野生型に加えてみると、同様に開花時期の遅延が起こりました。
さらに短いRNA(miR156)が遺伝子に与える影響を調べたところ、植物の成熟に必要な遺伝子(SPL9およびSPL9)の働きが大幅に抑えられていることが判明します。
また別の短いRNA(miR399)を加えたところ、栄養素(リン酸)の取り込み速度を低下させることにも成功しました。
この結果から研究者たちは、植物は水と根を介して短いRNAを使った情報伝達をしていると結論付けます。
RNAはガスと異なり、状況に応じて文字列を変更可能な「手紙」として使用可能です。