細菌のバリアは実は穴だらけだった
驚いたことに、画像化された細菌の表面には、タンパク質が含まれていない穴がびっしり並んでいたのです。
これは、細菌の外膜について現在記されいる教科書の内容とは異なる状態です。
現在の教科書の画像は、細菌の外膜でタンパク質が無秩序に分布しているように表現されていて、他の構成要素とよく混ざっているように見えます。
しかし、今回の画像ではそうした状態ではなく、ちょうど油から水が分離するように、タンパク質の多いネットワークから分離した脂質パッチがあり、細菌のバリアに穴が空いていることがわかったのです。
また、突然変異によって膜の一部が裏返しになったときは、通常グラム陽性菌に対してのみ有効な抗生物質バシトラシンが、グラム陰性菌にも有効になることも確認されたのです。
では、なぜ細菌はそんな穴だらけのバリアを使っているのでしょうか?
大腸菌などの一般的な細菌は、好ましい条件下でなら20分ほどで大きさが2倍になって分裂します。
このような早い成長に、タンパク質のネットワークは追いつけず、そのためこのようなバリアの穴が生じている可能性があると、研究者は考えています。
細菌の表面は、タンパク質のバリア以外の部分は、糖脂質によって覆われていました。
糖脂質の方がタンパク質のネットワークより伸縮性が高いため、細菌の成長に適応しやすかったのでしょう。
今回の研究では、まだこうした新しい細菌の構造が、感染症の治療などでどう役立つかはわかっていません。
しかし、これが薬剤に対する細菌の脆弱性となる可能性はあり、今後の薬剤による治療に対して新しい方法を見つけるきっかけになるかもしれません。