木星大気の内部を探る2つの研究
今回の調査結果は、NASAの木星探査機「ジュノー」の異なる2つの計測器を用いて、それぞれ行われた2つのグループの研究のおかげです。
1つ目のグループは、大赤斑の重力を測定しました。
「ジュノー」の重力計器を幅1万6000kmある大赤斑の嵐に向けてみたのです。
小さな質量の変動から、気候プロセスなどを調べる方法は、地球でもNASAのGRACEミッションというものが実行されています。
そのため、これは単純なアイデアでしたがジュノーのミッションではもともと予定されていないものでした。
この測定から何かが発見できる確証はありませんでしたが、NASAジェット推進研究所のマルツィア・パリシ(Marzia Parisi)氏は重力測定を提案し、承認を受けて今回の研究を行いました。
結果、この研究は木星の重力場の変動を拾い上げ、大赤斑の嵐の深さが500kmに達することを明らかにしたのです。
また、同時に別のグループが、ジュノーに搭載されたマイクロ波放射計を用いて惑星大気の探査を行いました。
これも嵐の深部を調べ、垂直方向に対してどのように嵐が変動しているかを確認したのです。
するとこちらの研究でも予想外に深い位置まで、嵐の動きが続いていることを発見しました。
それは木星に浮かぶ雲の位置よりもさらに下であり、大気中のアンモニアと水が凝縮するポイントまで続いていました。
これらの調査を合わせて、今回大赤斑の深さは500kmも広がっているという結果が報告されたのです。
また今回の調査からは、この大赤斑の嵐が、さらにずっと深い場所(約3200km)に達する、木星下層大気のジェット気流から力を供給されている可能性も示されました。
これは巨大な惑星の上層大気と下層大気が、大赤斑の大渦で接続されていることを示唆しています。
最近の研究では、木星と同じ巨大ガス惑星である土星の中心は、固体のコアがない可能性が示されており、同じガス惑星である木星も、固体のコアなど持たない可能性があります。
明確な地面やコアを持たず、どこまで深く流動する物質が続くガス惑星は、まだまだ謎に満ちた存在です。
今回の研究は、そうした木星の理解を深めるための一助となりそうです。