サルの脳に500本の電極を刺し込んで仲間とその他を決定する回路を発見!
近年の脳科学の進歩により、特定の行動が、対応する脳回路の活動に対応していることがわかってきました。
例えばマウスにおいては「虐待回路」を、脳に刺し込んだ光ファイバーで活性化させると乳児の虐待を引き起こし、抑制すると虐待をストップさせられます。
この結果は、動物にみられる多くの行動が、対応する回路の活性に支配されていることを示す一端と言えるでしょう。
しかしマウスから得られる知見は限定的であり、応用するにはより人間に近いサルなどの霊長類を用いた実験が必要でした。
そこで今回、ハーバード大学の研究者たちは、人間に近いサル(アカゲザル)を用いて、仲間意識や特定の相手に対する好き・嫌いにかかわる脳回路を探索することにしました。
研究者たちはまず、サルの他者の気持ちを思いやったり、自分と他者の区別を行うといった機能を担当する背内側前頭前野(dmPFC)に500本の電極を刺し込み、500個のニューロンの活動を同時に記録できるようにしました。
次いで研究者たちは3匹のサルを2個のリンゴが置かれた回転する円卓に配置しました。
ただ3匹のサルのうち、卓を回せるのは1匹のみです。
そのため卓を回せるサルは自力でリンゴをゲットできますが、その過程で他の2匹のどちらかにリンゴをプレゼントすることが可能です。
するとサルは相手をみて、自分の好みのサル(仲間)にリンゴをあげられる方向に卓を回しました。
研究者たちは同様の利他的な状況を、リンゴの数や位置を変えながら3匹のサルたちに繰り返し行わせます。
すると興味深いことに、プレゼントを受けたサルは自分がプレゼントをできる機会(卓を回す権利)がくると、過去にプレゼントをしてくれたサルにお返しをする一方で、プレゼントをくれなかったサルには報復する場合もみられました。
リンゴと回る円卓によって、3匹の間には好意と敵意、嫉妬と羨望が渦巻く関係が構築されていたのです。
問題はここからです。
プレゼントを授受しているときのサルの脳では、いったい何が起きていたのでしょうか?