100年前より背が高く思春期が早くなった理由
栄養をとれば子供が早く、大きく成長するのは、誰もが当然だと思っています。
事実、栄養条件の改善により、私たちの身長は100年前に比べて高くなり、思春期に入る時期も前倒しになっています。
しかし、体がどのような仕組みで栄養の量を検知して、成長量や成長速度に反映させるかという、根本的な仕組みは謎に包まれていました。
そこで今回、ケンブリッジ大学の研究者たちは栄養量と成長を結びつけるメカニズムの解明に挑むことにしました。
調査にあたって研究者たちが最初に目をつけたのは、脳内で食欲を調整する遺伝子(メラノコルチン受容体)でした。
食欲を調整する遺伝子(メラノコルチン受容体)ならば、栄養量と成長の関係を取り持つ機能があると考えたからです。
そこで研究者たちは50万人の遺伝子データを分析して、身長や思春期に入る時期との関係を調べました。
結果、数千人においてメラノコルチン3型受容体に突然変異があり、そのうち812人の女性において思春期に入る時期が平均して4.7カ月、遅くなっていると判明します。
また90年代うまれの子供6000人を集中的に分析した結果、6人においてメラノコルチン3型受容体に突然変異があり、全員の背が低くいことがわかりました。
さらに、対になる染色体の両方においてメラノコルチン3型受容体に変異があった男性の場合、著しく低身長であるだけでなく、思春期に入ったのが20歳後半という極端に遅い時期となっていました。
この結果は、私たちの身長や思春期の始まりは、単純な栄養量が決めているのではなく、脳で働く栄養量を検知して成長信号に変換する遺伝子によって調節されていることを示します。