火星基地のアーティストイメージ
火星基地のアーティストイメージ / Credit:Wikimedia Commons
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大腸菌で火星脱出のロケット燃料を作る技術が登場

2021.11.08 Monday

現在火星で活躍している探査機は、基本的に片道切符で地球へ帰還することは想定されていません。

しかし、今後は人間を火星に送ることも計画されており、火星から地球へ帰ってくるための技術は不可欠なものとなります。

ここでネックとなるのが火星から脱出するためのロケット燃料をどうやって確保するかです。

そこで米国ジョージア工科大学(Georgia Tech)の新しい研究は、大腸菌を利用して火星でロケット燃料を生成させる新しい方法を提案しています。

この方法で生成される 「2,3-ブタンジオール (2,3-BDO)」は、地球大気圏の脱出にはパワーが足りない燃料ですが、重力が弱い火星からの脱出には十分に活躍できるとのこと。

研究の詳細は、10月25日付で科学雑誌『Nature Communications』に掲載されています。

Making Martian Rocket BioFuel on Mars https://news.gatech.edu/news/2021/10/25/making-martian-rocket-biofuel-mars
Designing the bioproduction of Martian rocket propellant via a biotechnology-enabled in situ resource utilization strategy https://www.nature.com/articles/s41467-021-26393-7

火星発ー地球行の帰還便はとても割高

火星の荒野を調査する探査機パーサヴィアランス
火星の荒野を調査する探査機パーサヴィアランス / Credit:NASA/JPL-Caltech/MSSS

現在火星に探査機がいくつも送り込まれていますが、彼らは基本的に火星へ降下したあと、再び宇宙へ出て地球へ帰ることは想定されていません

しかし、人間が火星へ送り込まれるようになった場合は、そうもいきません。

火星に基地を建設しても、定期的に地球へ帰ってくる必要が出てくるでしょう。

惑星の重力圏から脱出するには、さまざまな技術が必要となってきますが、たとえ技術的な問題がクリアされたとしても、ネックとなってくるのが燃料確保の問題です。

ロケットを飛ばすというのは非常に大量の燃料を消費します。

現在の計画では火星を脱出する際のロケット推進剤は、メタンと液体酸素(LOX)の混合燃料を使う予定となっています。

しかし、このどちらも現地で調達することはできません。

そこで、この燃料は地球から輸送する必要がありますが、火星への輸送費は莫大です。

火星脱出に必要となるおよそ30トンの燃料を地球から輸送した場合、その費用は約80億ドル(約9090億円)に上ると推定されています。

そのため、NASAは火星の二酸化炭素を利用して、これを化学触媒の利用によってLOXに変換する技術を提案していますが、この方法ではメタンを現地で調達することができないため、結局地球からの輸送を必要とします。

そこで今回、ジョージア工科大学の研究チームは、バクテリアを使って二酸化炭素からメタンもLOXも両方生成する新しい方法を提案しました。

「二酸化炭素は、火星で利用できる数少ない資源の一つであり、生物の中には二酸化炭素を有用な製品に変換する能力に優れたものがいます。

つまり生物の利用は、火星でロケット燃料を製造するのに適しているのです」

ジョージア工科大学化学・生物分子工学部で博士号を取得したニック・クルーヤー(Nick Kruyer)氏は、今回の研究についてその様に述べています。

では、その方法とはどういったものなのでしょうか?

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