無職だけど「周囲の目が気になる」人向けの”なんちゃって出勤”ビジネス

社会において「仕事をしている」というステータスは、単なる収入源を超えた意味を持ちます。
特に家族や社会とのつながりが強調されるアジア文化圏においては、自分の職業が他者からどう見られるかが精神的な安心感に直結することもあります。
広東出身の女性ゾンファさん(仮名)もまた、そのような安心感を欲していました。
しかし彼女は金融業界のプレッシャーに疲れ、2024年に退職しました。
無職のままでいることが周囲に知られるのを恐れ、最初は図書館やカフェに身を寄せていました。
そして、やがて彼女は、北京にある“偽装オフィス”に月額400元(約8000円)を支払い、通うようになります。
そこには机が並び、Wi-Fiとコーヒーがあり、社員証らしきものを首から下げた人々がパソコンに向かっています。
けれど、それはすべて“演出”なのです。

この「なんちゃって出勤」スペースでは、30~50元(約600〜1000円)で1日を過ごすことができます。
実際の上司や仕事は存在しませんが、その代わり、架空の業務が割り当てられるケースもあります。
追加料金を支払えば、“管理職”を装うなどの演出も得られます。
こうしたサービスが急成長した背景には、中国の高い若年失業率があります。
中国国家統計局の報告によると、2025年第1四半期の都市部の失業率は5.3%ですが、25歳未満の非学生層では16.5%、25〜29歳でも7.2%に達しています。
特に競争が激化する都市部では、就職活動に失敗したことを“知られる”ことが大きなストレスとなるのです。
SNSでは、この“偽装就業”サービスを宣伝する投稿が急増し、何百万回も閲覧される人気トピックとなっています。
一方で、ネットユーザーの間では「自分をごまかしているだけだ」という批判の声もあり、社会的な議論も活発化しています。
では、この中国のなんちゃって出勤サービスの実態はどのようなものでしょうか。