たった数分の活動「マイクロ・アクト」でも人は幸せになれる?
本研究の背景には、「幸福感は心身の健康を支える重要な要素である」という科学的な知見があります。
高い幸福感を持つ人は、うつ病や不安障害の発症リスクが低く、心疾患や慢性病の発生率も抑えられると報告されています。
米国の国民予防戦略においても、「ウェルビーイング」は公衆衛生の重点領域として挙げられています。

従来のウェルビーイング向上法には、感謝日記の記入、瞑想、ポジティブ心理学的トレーニングなどがあり、その効果は多くの研究で実証されてきました。
しかし、これらの介入は数週間から数ヶ月にわたる取り組みが前提で、時間や労力を要するため、継続できない人も多いのが課題でした。
そこで研究者たちは、「もっと手軽で短時間でも効果がある方法はないか?」と考え、「The Big Joy Project(ビッグ・ジョイ・プロジェクト)」という大規模な市民参加型実験を立ち上げました。
このプロジェクトには、169カ国から1万7598人が参加しました。
各参加者は7日間、毎日1回、5〜10分程度の「マイクロ・アクト」を実施しました。
マイクロ・アクトの具体的なの内容は、「誰かの喜びを一緒に祝う」、「感謝リストを作る」、「小さな親切を計画・実行する」、「自分の価値観を見つめ直す」、「困難な体験から得たポジティブな側面を見つける」、「自然の動画を見て畏敬の念を味わう」、「世界に善をもたらす自分をイメージする」というものです。
参加者は、行動の前後で気分を記録し、7日後には自分の感情変化や効果の高かった行動のフィードバックを得ることができました。