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psychology

「小さいことでキレ過ぎ」人は何歳から怒りのコントロールが上手くなるのか?

2025.07.12 07:00:57 Saturday

Xの投稿などを見ていても、小さいことで怒り過ぎじゃない?と感じることは多いかもしれません。

しかし歳を取ると人は落ち着く印象もあります。

ヤクザ映画で若い頃は過激武闘派だった人物が歳をとって好々爺になったという定番の設定があるのもこの印象によるものでしょう。

実は、年齢を重ねることによって、怒りの感じ方やその扱い方が変化するということは、科学的にも裏付けられつつあります。

しかし、大体いくつくらいから人の心は落ち着くものなのでしょうか?

この興味深い変化について、アメリカ・ワシントン大学(University of Washington)の研究チームは、特に女性の怒りのコントロールが上手くなる時期について調査を行いました。

女性は更年期など体の変化も精神状態に影響するため、この問題を追うことがかなり難しいとされています。彼らは10年近く女性を追跡し、どのような変化が起きるかを詳細に分析したのです。

この研究の詳細は、2025年7月に学術誌『Menopause』に掲載されています。

Women’s Anger Management Improves in Midlife, Study Finds https://www.newsweek.com/women-get-better-managing-their-anger-midlife-2093567
Anger, aging, and reproductive aging: observations from the Seattle Midlife Women’s Health Study https://doi.org/10.1097/GME.0000000000002587

女性は怒りっぽい?

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若い頃は怒りっぽかった人でも、歳を重ねると怒りの表出は控えられるようになり、穏やかな人物になる人が多くなる印象があります。

しかし、人が怒りのコントロールが上手くできるようになるのは、どのくらいの年齢からなのでしょうか?

男性の場合は、怒りの表現や、そのコントロールの状態の変化は比較的わかりやすい傾向があります。

男性の場合、40代以降を中心に怒りの頻度や強度が下降し、自己制御力が向上する傾向が報告されていて、脳波(ERP)研究では、若者は怒り顔などのネガティブ表情に強い反応を示す一方で、高齢男性(60代以降)では怒りへの反応が鈍くなる傾向が確認されています。

しかし女性の場合、「怒っている自分が“感情的”に見られるのでは」と不安に思い、その場で直接表現するのではなく、後から友人に愚痴をこぼしたり、SNSで不満を書き込んだりといった、間接的な表現に頼るケースが多いとされ、怒りの状態が分かりづらい傾向があります。

また、40代〜50代にかけて、月経の不安定さや更年期症状など、ホルモンバランスの大きな変化に直面し、これが感情や怒りの変化にも影響するため、年齢により怒りなどの感情のコントロールがどのように変化するかを明らかにするのは複雑な問題となっています。

そこでアメリカ・ワシントン大学(University of Washington)の研究チームは、こうした問題意識に基づいて女性の怒りのコントロールは年齢でどの様にコントロールされていくのかを明らかにしようと調査を行ったのです。

研究では、35歳から55歳の女性271人を対象に、更年期のステージごとに怒りの感情がどのように変化するのかを、心理学的な尺度を用いて精密に測定しました。

参加者たちは、ホルモン状態や月経の状況から5つの段階――「プレ更年期(閉経前)」「更年期移行期の前半」「更年期移行期の後半」「閉経直後」「閉経後」――に分類され、それぞれの時期における怒りの強さや表現方法、コントロールの程度などが評価されました。

怒りの評価には、以下の5つの心理尺度が用いられました:

  • ステート・アンガー(State Anger):その瞬間に感じている怒りの強さ

  • トレイト・アンガー(Trait Anger):普段から怒りを感じやすい傾向

  • 怒りの表出(Anger-Out):怒りを他人に向けて爆発させる傾向

  • 怒りの抑圧(Anger-In):怒りを我慢して内側に押し込める傾向

  • 怒りの制御(Anger Control):怒りを冷静に扱い、適切に反応できる力

さらにこの研究では、参加者の年齢や更年期の段階だけでなく、睡眠の質、喪失体験(身近な人の死など)、社会的支援の有無といった心理社会的な要因も統計的に調整することで、「単に年齢を重ねたから怒りが減る」という単純な解釈に留まらない分析が行われています。

このように、怒りという複雑な感情に対して、多角的かつ科学的にアプローチした点が、今回の研究の大きな特徴です。

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