病気でだるいから「仲間との交流」を避けているのか?

風邪をひいたとき、LINEの通知すら開きたくないことがあるのは、気のせいではないのかもしれません。
病気で寝込んでいるとき、普段なら楽しいはずの友達との会話も「今日はいいや」と感じてしまうことがあります。
これは人間だけでなく、動物でもよく見られる反応です。
例えば、実験用マウスが細菌の成分を注射されて「病気モード」になると、同じケージの仲間から少し離れた場所でじっとする時間が増えることが本研究などで示されていました。
一種の「自分から距離を取るソーシャルディスタンス」です。
これまで、この行動は「体がだるくて動きたくないだけ」だと考えられてきました。
熱や関節痛、筋肉痛など、いわゆるシックネス・ビヘイビア(sickness behavior:病気のとき特有の行動)全体の一部として、まとめて説明されていたのです。
確かに、寝込んでいるときに友達の家まで遊びに行くのは大変ですから、「動けないから結果的に一人になる」という説明でも、なんとなく納得できてしまいます。
しかし、生物学の世界では以前から「もしかすると、もっと積極的な意味があるのでは?」と考えられてきました。
たとえばアリやコウモリなどでも、感染すると自分から巣の外れに移動したり、健康な個体が病気の仲間を避けたりする「自然のソーシャルディスタンス」が報告されています。
自らボッチになる「自己隔離」を選ぶことで、危険な感染症が群れ全体に広がることを防ぐことが可能になります。
では、この「病気になるとボッチになる」行動は、本当に脳が意図的に作り出しているのでしょうか。
それとも、やはり体がしんどい結果として、たまたまそう見えているだけなのでしょうか。
もし脳の中に「ぼっち専用回路」が隠れているとしたら、それはいったいどこにあり、どんなスイッチでオンになるのでしょうか。
今回の研究は、このモヤモヤした疑問に、「免疫」と「脳回路」をつなぐ形で答えに行きました。


























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