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死への対応力を測る指標を開発。日本は低水準 / Credit:Canva
society

「死」への対応力、日本は諸外国に比べ低水準

2026.01.12 06:30:29 Monday

私たちは、身近な人が亡くなるとき、あるいは人生の終末期に直面したとき、どれほど「対応できる力」を持っているでしょうか。

看取りの場面で何をすべきかを理解し、誰に相談し、どのような準備が必要なのかを具体的に説明できる人は、決して多くないかもしれません。

こうした「死への対応力」を客観的に測る新たな指標を、日本の実情に合わせて開発した研究が、千葉大学と北海道大学の研究グループから報告されました。

研究では、日本語版のデス・リテラシー尺度(DLI-J)とその短縮版を用い、日本人の「死への備え」の現状が具体的な数値として示されています。

この研究成果は、2025年12月7日に国際学術誌『Psychiatry and Clinical Neurosciences Reports』に掲載されました。

終末期や死に関する実践的な知識と行動能力を測る新指標「デス・リテラシー尺度」の日本語版を開発 https://www.chiba-u.jp/news/research-collab/post_626.html
Development and validation of the Japanese version of the Death Literacy Index (DLI-J) and its short form (DLI-J-9) https://doi.org/10.1002/pcn5.70258

日本の「デス・リテラシー」は諸外国と比べて低水準

日本は超高齢社会の進行により、今後、死亡者数が急増する多死社会を迎えると予測されています。

医療機関のベッド数には限りがあり、人生の最期を迎える場所は、病院から地域や在宅へと徐々に移行しつつあります。

では、家族や地域社会が終末期や死に直面したときに、私たちは実際にどのように行動すればよいのでしょうか。

「死」に対してどの程度の準備ができているのでしょうか。

このような「死」への備えや対応力の程度は、これまで明確ではありませんでした。

そこで注目されたのが、終末期や死に関する実践的な知識と行動能力を指す「デス・リテラシー」という概念です。

デス・リテラシーとは、死について考えたことがあるかどうかといった意識や態度ではなく、情報にアクセスし、それを理解し、実際に意思決定し行動できる力を意味します。

研究では、この能力をいくつかの要素に分けて考えています。

たとえば、死や看取りについて人と話し合える力、身近な死の経験を通じて得られる学び、医療や介護制度および法的手続きに関する知識、そして地域の支援や相談先を知り、実際に利用できる力などです。

このデス・リテラシーを測る指標として、オーストラリアでDeath Literacy Indexが開発され、スウェーデンや中国、トルコなどでも翻訳版が作成されてきました。

しかし、日本には文化や法制度に適合した測定ツールが存在していませんでした。

そのため研究グループは、国際的なガイドラインに従い、原版尺度の翻訳と逆翻訳、専門家による検討、一般市民への聞き取りを重ね、日本語版DLIを開発しました。

たとえば、原版に含まれていた「注射の投与」という項目は、日本では一般市民が行えない行為であるため、「投薬管理や軟膏塗布」といった現実的な介護行為に置き換えられています。

こうして完成したDLI-Jを用い、2025年2月に全国の成人男女2,500人を対象としたオンライン調査が実施されました。

その結果、DLI-Jは尺度として高い信頼性と妥当性を持つことが確認されました。

一方で、日本の総合スコアは10点満点中3.82点と、英国やスウェーデンなどの諸外国と比べて低い水準にとどまっていました。

この点数の内訳が示す意味については、次項で見ていきましょう。

次ページ日本人の「死への対応力」が低い理由とは?

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