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history archeology

100年前に50万人を死亡させ、忽然と姿を消した「恐怖の感染症」とは?

2026.02.12 21:00:39 Thursday

今から約100年前、世界は「スペインかぜ(1918年インフルエンザ)」の大流行に揺れていました。

実はその陰で、もう一つの奇妙な病が静かに広がっていたのです。

人を異常な眠気に引き込み、目覚めても体が動かず、言葉も出ない。生きているのに“像”のように固まる人さえいました。

その病気の名前は「嗜眠性脳炎(Encephalitis lethargica)」

推定で100万人以上が罹患し、50万人以上が死亡したとされるのに、1920年代後半には流行がほぼ途絶え、原因も決着しないまま歴史の影に消えました。

いったい何が起きていたのでしょうか。

Encephalitis Lethargica: The Strange Disease That Killed 500,000 People, And Then Abruptly Disappeared https://www.iflscience.com/encephalitis-lethargica-the-strange-disease-that-killed-500000-people-and-then-abruptly-disappeared-82511

ウィーンで“未知の脳炎”が名づけられた

嗜眠性脳炎は、1916〜1917年の冬にヨーロッパで目立ち始め、1915年から1926年ごろにかけて世界的流行に至ったとされています。

最初に詳細な報告を行ったのは、ウィーン大学の精神神経科で診療していた神経学者コンスタンティン・フォン・エコノモらです。

患者は髄膜炎、多発性硬化症、せん妄など疑い病名がばらばらでしたが、既知の病気の枠に収まりませんでした。

そこで決め手になったのが、病名にも入った「嗜眠」、つまり強い眠気です。

症状の幅は非常に広く、高熱、のどの痛み、頭痛、強い嗜眠、複視、反応の遅れ、睡眠リズムの逆転などが挙げられています。

重症例では無動性無言のように、意識があるのに動けず話せない状態に近づくこともあります。

さらに異常な眼球運動筋肉痛や頸部硬直、精神症状なども報告され、子どもでは行動変化が強く出たという記載もあります。

まさに「脳のどこをどう巻き込むか」で顔つきが変わる病だったわけです。

当時の臨床像を語るうえで有名なのが、後年この病の後遺症患者を診た神経学者オリバー・サックスの記述です。

彼は患者が周囲を理解しているのに、椅子に座ったまま動かず、話さず、深い無関心に沈む様子を描写しました。

嗜眠性脳炎は「眠っている」だけではなく、「起きているのに生きている感じが薄れる」ような、奇妙な状態を生むことがあったのです。

次ページ治っても終わらない、原因も決着しない

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