画像
Credit: en.wikipedia
history archeology

100年前に50万人を死亡させ、忽然と姿を消した「恐怖の感染症」とは? (2/2)

2026.02.12 21:00:39 Thursday

前ページウィーンで“未知の脳炎”が名づけられた

<

1

2

>

治っても終わらない、原因も決着しない

嗜眠性脳炎のもう一つの恐ろしさは、急性期を乗り越えても安心できない点です。

総説では、慢性期にパーキンソニズム(動作緩慢、筋肉のこわばり、安静時の震え、姿勢保持障害)が現れやすいことに加え、睡眠障害、眼球運動の異常、不随意運動、発話や呼吸の異常、精神症状などが目立つとされます。

流行後の数十年では、パーキンソニズムの相当部分が「脳炎後」だった可能性が推定されています。

つまり、流行が去ったあとも、医療現場には“遅れてやってくる影”が長く残りました。

では原因は何だったのか。ここが最大の謎です。

流行時期が1918年インフルエンザと重なるため、当初は両者の関連が強く疑われました。

しかし、近年の整理では「インフルエンザ原因説に懐疑的な文献が優勢」とされる一方、完全に決着したわけではなく、議論が続いています。

また、自己免疫反応の関与を示す研究、あるいは感染症と免疫反応の組み合わせなど、複数の道筋が検討されています。

さらに2012年の研究は、限られた脳組織サンプルの解析から、エンテロウイルスが原因候補になり得るという「証拠」を提示しました。

ただし、これが決定打になって「全員これだった」と確定したわけではありません。

結局、嗜眠性脳炎は「原因不明」の棚に置かれたまま、1920年代後半には流行自体がほぼ消えていきました。

病原体が絶えたのか、診断枠が変わったのか、免疫学的な背景が揺れたのか。理由はまだ断言できません。

消えた病気は、また現れるのか

嗜眠性脳炎は、推定50万人以上の命を奪いながら、原因の確定に至らないまま“自然終息”した稀有な例です。

病気が消えるのは確かに良いことですが、原因が分からないと「なぜ再発しないと言えるのか」も言えません。

100年前の医療では見えなかった手掛かりが、現在の分子生物学や免疫学なら拾える可能性があります。

もし似た症候群が再び現れたとき、私たちが頼れるのは、過去の記録と、今の技術を結びつける冷静さです。

<

1

2

>

コメントを書く

※コメントは管理者の確認後に表示されます。

0 / 1000

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

歴史・考古学のニュースhistory archeology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!