「重い星ほどブラックホールになりやすい」は違った――常識を裏切る45倍の壁を観測
「重い星ほどブラックホールになりやすい」は違った――常識を裏切る45倍の壁を観測 / Credit:Canva
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「重い星ほどブラックホールになりやすい」は違った――常識を裏切る45倍の壁を観測

2026.04.03 20:30:04 Friday

私たちは重ければ重い星ほど、死ねば重いブラックホールになると考えがちです。

しかしオーストラリアのモナシュ大学(Monash University)などで行われた国際研究は、そういった単純な理解が単純すぎることを示し、「極端に重い星は、場合によってはブラックホールにすらなれない」ことが示唆されました。

具体的には、太陽質量およそ45倍以上のブラックホールは星の死によって作られたものではなく、ブラックホール同士の合体でできた可能性が高いことが示唆されました。

なぜ重すぎる星は、ブラックホールになれないのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年4月1日に『Nature』に発表されました。

New study finds evidence of cosmic explosions with missing black holes https://www.artsci.utoronto.ca/news/new-study-finds-evidence-cosmic-explosions-missing-black-holes
Evidence of the pair-instability gap from black-hole masses https://doi.org/10.1038/s41586-026-10359-0

「重い星が死ぬとブラックホールになる」は正しいのか?

「重い星が死ぬとブラックホールになる」は正しいのか?
「重い星が死ぬとブラックホールになる」は正しいのか? / Credit:Canva

夜空を見上げると、たくさんの星が輝いていますが、全ての星には寿命があります。

星は基本的に水素という燃料を核融合で燃やしながら、そのエネルギーで輝き続けています。

このエネルギーが星の内側から外側に向かって押す力を生み出しています。

この内から外に向けた圧力あるからこそ、星は自分の重さ(重力)に負けてペシャンコに押しつぶされずに済んでいるのです。

しかし燃料が枯渇すると、星は死に向かって大きな変化を起こします。

たとえば私たちの太陽くらいの星は、星はゆっくりと外側をふくらませて「赤色巨星」になります。

その後、外側のガスを少しずつ宇宙へ放出し、中心だけが残って「白色矮星」という小さくて非常に密度の高い天体になります。

太陽の重力は宇宙の中では「ほどほどの強さ」でしかないため、最終的に外側の物質を重力で引き留めきれなくなるからです。

ところが、宇宙には太陽よりずっと強い重力を持つ星が存在します。

このような重い星で使える燃料がなくなると、内側から支えるエネルギーが減ってしまい、星は自分自身の重力で急激につぶれはじめます。

そして圧力が物質世界の抗える反発の限界を超えると、空間に穴が開いたようなブラックホールが生まれることになります。

そのため直感的には、星が重ければ重いほど、死後にはより重たいブラックホールが出現すると思いがちです。

実際、既存の理論では一般に太陽質量の20~40倍前後の星はブラックホールを作りやすいと考えられています。

しかし宇宙にはさらに超重量級の星も存在します。

天文学者たちはそんな、「超重い星」について以前から不思議な理論を唱えてきました。

それはものすごく重い星は「ブラックホールにすらなれないかもしれない」ということです。

しかし、どうして重すぎるとブラックホールになれない星があるのでしょうか?

結論から言えば「超重い星が起こす超新星爆発が激しくなりすぎて、ブラックホールの芯となる高密度領域すら消し飛んでしまう場合があるから」です。

  • コラム:なぜ重すぎる星がブラックホールになれない場合があるのか?

鍵となるのは「重すぎる星の内部が熱すぎること」です。重すぎる星の中心部は超高温になると、これまで星の内部で光を作り出していた「光子(こうし)」という粒子が、エネルギーを使って「電子」と「陽電子」のペアに変化し始めるのです。

アインシュタインの相対性理論では「質量はエネルギーの一形態」であることが示されています。

そのため十分に大きなエネルギーがあれば、質量を持つ「電子」と「陽電子」対生成という質量変化イベントが起こり得るのです。高エネルギーの光は、十分に高温な環境では“ただの光”としてだけでなく、そのエネルギーが質量をもつ粒子対としても現れるわけです。

これは星にとって重大なトラブルです。

なぜなら、光子が電子と陽電子に変わると、これまで星を内側から支えていた光の圧力が弱まり、中心部が急激に自分の重力で縮みはじめるからです。ただし、そこでそのまま静かにブラックホールになるわけではありません。中心部が一気につぶれることで温度と密度がさらに跳ね上がると、今度は星の内部で酸素が爆発的に燃え、巨大なエネルギーが一瞬で放出されます。そのエネルギーが、いわば落ち込みかけた星の内部を一気に押し返し、反発する形で巨大な爆発を起こしてしまいます。

これが、「対不安定性超新星」と呼ばれる特別な現象です。

爆発と言うと内部から外側に一直線にいくものと思いがちですが、今回の対不安定性超新星では、このように外側の落ち込みが起こると同時に、内側でゴムボールのように反発する力が作られ、内側の圧力で外側が吹き飛ぶことで起こるのです。特に「対不安定性超新星」の爆発は普通の超新星爆発よりもはるかに強力で、星の中心部分だけではなく、星のほとんど全部を一気に吹き飛ばしてあたりに残骸を拡散させてしまう場合があります。すると、ブラックホールを作るために必要な高密度の芯の部分すらなくなってしまうのです。

既存の理論では、初期質量が太陽のおよそ100倍から260倍ものとても巨大な星が、この特別な運命を迎える可能性があり、結果として太陽の50倍〜130倍程度の質量を持ったブラックホールは星の死によってできにくくなると考えられていました。

つまりこの理論が本当に正しいとすると、宇宙には特定の重さのブラックホールが非常にできにくい、「空白地帯」が存在することになります。

しかし現実には、そのような重さの空白地帯は明白には見えませんでした。

というのも、ブラックホールは一度できたあとも、別のブラックホールと合体することでさらに重くなり、その空白をあとから埋めてしまう可能性があるからです。

そのため、長年、このブラックホールの空白地帯は本当にあるのか、なかなかはっきりとは分かりませんでした。

初期の重力波観測データでも、一見すると45太陽質量付近から上でブラックホールが減っているように見えましたが、その後さらに重いブラックホールが発見され、話は一層複雑になったのです。

ところが今回、研究チームは新たな視点でデータを見直し、この難問に新しい突破口を見つけることに成功しました。

一体どのようにして、研究チームはブラックホールの空白地帯が本当にあるのかを確かめ、それが私たちの宇宙にどんな新しい事実を教えてくれるのでしょうか?

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