原子を極端に冷やしたり押しつぶしたりすると、光を散乱させる能力が抑制されることが新しい研究で確認された
原子を極端に冷やしたり押しつぶしたりすると、光を散乱させる能力が抑制されることが新しい研究で確認された / Credit: Christine Daniloff, MIT
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「原子を透明にする現象」が実験で観測される (2/2)

2021.11.22 Monday

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原子の透明化

今回の研究者であるMITのケッタール(Ketterle)氏の考えを、おおざっぱに説明するならば、それは原子がほぼ停止状態に凍結して、十分狭い空間に隙間なく押し込めた場合、原子は速度や位置をシフトさせる余地がなくなり、電子殻が埋まった状態の電子のように振る舞う、というものです。

この状態の時、原子は光を散乱させることさえできなくなり、透明になるといいます。

ただ、実際にこれを実験しようとした場合、問題なのは原子を絶対零度近くまで冷却することよりも、身動きできないほど密な状態にするということです。

そこまで高密度の原子の雲を作り出すことは、これまでできなかったため、予想はあっても実験で確認することができていなかったのです。

密度が十分に高くなければ、いくら低温にしても原子は、空いたスペースに移動してしまい光を散乱させることができます。

今回の実験装置を調整する大学院生のYU-KUN LU氏
今回の実験装置を調整する大学院生のYU-KUN LU氏 / Credit:MIT News,How ultracold, superdense atoms become invisible(2021)

研究チームはまず、3つの電子と3つの陽子、3つの中性子を持ったリチウム原子の同位体を使い、この原子の雲を20マイクロケルビンまで冷却しました。

これは星間空間の温度の約10万分の1です。

次に、密集したレーザーを使用してこの極低温原子を圧縮して密度を高めていきました

チームによると、このときの密度を測定した値は、1立方センチメートルあたり約1兆原子に達していたといいます。

次に、研究チームは別のレーザービームを光子が原子を加熱したり、密度を変化させないよう最新の中止を払って、「冷却した密な原子の雲」に照射しました。

そして、特別なカメラを使い散乱した光子の数をカウントしたのです。

光子は非常に微弱な光ですが、チームの用いた装置は、それを塊として見ることができるほど非常に敏感です。

こうして慎重な実験を行った結果、約20マイクロケルビンで、原子は通常時より38%も光の散乱が減少していることを確認したのです。

これは原子が38%暗くなり、透明な状態に近づいていたということです。

超低温の原子は、量子状態に近づき、普通では見ることのできない特殊な振る舞いをします。

チームはこうした影響を除外して今回の結果を得るために、数カ月を費やしたといいます。

今回の結果は、38%散乱が減ったというだけなので、原子が透明になったと呼ぶには大げさかもしれません。

しかし、今回の結果から研究チームは、もし完全な絶対零度で今回の実験が行えた場合、蜜な原子は完全に見えなくなる可能性があると述べています。

こうした成果は、光の散乱がデータに干渉する問題となる量子コンピューターの制御において、役立つ可能性もあるとのこと。

低温の原子の世界には、まだまだ観測されていない不思議な現象が潜んでいるようです。

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