「トラクター・ビーム」でデブリを回収
デブリのほとんどは高速で移動しており、ロボットアームで止めようとすれば、アームが壊れて、さらなるデブリが発生してしまいます。
そこで、アボット氏が考えたのが、磁石の渦電流(うずでんりゅう)を利用する方法です。
渦電流とは、磁場内で電気伝導体を動かすことで生じる渦状の誘導電流です。
同チームは先月、学術誌『Nature』に発表した論文内で、その方法を詳述しています。
簡潔に説明すると、ロボットアームの先端に磁石を設置し、それを回転させることで渦電流が発生。その磁場を利用して、宇宙空間に漂うデブリを吸い付けて回収するというものです。
アボット氏は、これについて「私たちは基本原理として、世界初の『トラクター・ビーム』を開発しました」と話します。
トラクター・ビームとは、SF作品に出てくる用語で、磁場を発生させて重力を操作し、対象物を引き寄せたり押し放したりするテクノロジーのことです。
あとはエンジニアリングの問題で、実際に作って宇宙に打ち上げることができれば実用化は可能だ、とアボット氏は言います。
また、人工衛星や宇宙船を中心とした大量のデブリがもたらす負担を軽減するための取り組みも行われています。
アップル社の共同設立者であるスティーブ・ウォズニアック(Steve Wozniak)氏が支援するスタートアップ企業・Privateer社は、「軌道上の宇宙ゴミを追跡し、その行動や移動先を予測することで、すべての国にとって宇宙をより安全なものにしようと試みている」と語っています。
同社のチーフ・サイエンス・アドバイザーであるモリバ・ジャー(Moriba Jah)氏は「デブリが今後数分から数時間の間にどこに行くのかを知ることで、宇宙をより透明に、より予測しやすくすることです」と話します。
デブリは何年も、場合によっては何十年にも渡って宇宙船に大打撃を与える危険性があり、懸念すべき問題です。
これからの宇宙開発時代において、デブリは避けて通れない障害となるでしょう。