ダイヤモンドより硬いガラスを作る
非常に硬いガラスを作るということは、材料研究を行う研究者にとって1つの目標となっています。
今回の研究チームの1人、カーネギー科学研究所のイングヴェイ・フェイ(Yingwei Fei)博士も「3次元結合を持つアモルファスカーボン材料の合成は長年の目標だった」と語っています。
ガラスについては、よく「液体でも固体でもない状態」という不思議な説明を聞いたことがあると思います。
この特殊な構造がガラスを特別な物質にしている原因で、これを科学の世界では「アモルファス構造」と呼びます。
アモルファスは、通常の固体が作るきれいに配列した結晶構造を持たず、無秩序な配列をしています。
こうなると普通は液体になりますが、アモルファスはその無秩序な配列で固体となっているのです。
アモルファスは成形しやすい、多くの優れた機械敵特性を備えるため、材料としては非常に魅力的です。
このため、さまざまな素材でアモルファス材料を作り出す研究が進められているのです。(通常のガラスは二酸化ケイ素(SiO2)を主成分としています)
ただ、アモルファス材料の合成は条件が難しく、なかなか実現されていないのが現状です。
なかでも注目されるのは、ガラス状の炭素、カーボンガラスの作成です。
炭素はダイヤモンドをはじめ、非常に多様な構造を取ることが可能な元素であり、作り出された材料に非常に硬い優れた特性をもたせることができます。
硬い物質は、原子が短距離で非常に整った配列を持っているために実現されます。
ダイヤモンドは、3次元の強い結合を持っているために、優れた均一な硬度を得ています。
フェイ博士が目指すような、優れた三次元結合を持つアモルファスを作ろうとした場合、ダイヤモンドのような優れた結晶を出発点にして、それに圧力をくわえて変形させて作成することになります。
しかし、ダイヤモンドの融点は4027℃と非常に高温のため、これを出発点にガラスを作るというのは非常に困難です。
そこで、研究チームはダイヤモンドの代わりとして、炭素の別の優れた構造体を利用することにしたのです。