ダイヤの代わりにサッカーボールを崩す
別の炭素の優れた構造というのが、通常バッキーボールと呼ばれる炭素構造です。
バッキーボールとは、正式名を「バックミンスターフラーレン」といい、60個の炭素原子が、20の六角形と12の五角形で二十面体を構成した構造のことです。
これはいわゆるサッカーボールと同じ構造です。
ちなみにこの構造の発見は1996年にノーベル化学賞を受賞しています。
今回の研究チームは、このバッキーボールを加熱して圧力をかけて構造を崩していきました。
そして、中~短距離ではダイモンドのような優れた秩序を保ちながら、局所的には無秩序に配列されているアモルファス構造を作り出したのです。
実験ではさまざまな条件で、この合成を試していますが、1000℃、20GPa(ギガパスカル)という条件でも作成に成功しています。
完成した材料は1mmという小さなサイズでしたが、ピッカース硬度試験では102GPaという優れた硬度を達成していました。
一般的なダイヤモンドの硬度は、50~70GPa程度のスコアになるということを考えると、これはダイヤモンドよりもはるかに硬い優れたガラスということになります。
これは以前、中国の別の研究チームが報告した「AM-Ⅲ」というカーボンダイヤに次いで2番目に硬いガラスです。(AM-3の硬度は113GPaだった)
実験では「マルチアンビル装置」という高温高圧をかける機械を使ってバッキーボールを圧縮加熱して、この材料を生み出しました。
今回の研究は、比較的低温で、超硬質ダイヤモンドガラスを合成することに成功していて、「この成果はこうした材料を大量生産するための足がかりになるだろう」と、研究者は語っています。
今後はこうした発見をもとに、もっと大きな塊を作ることが課題となっていきます。
超硬ガラス材料が実現されれば、傷がつきにくい携帯画面など、私たちの身近なところでも活躍する可能性がありそうです。